• "権原"(/)
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  1. 熊本県議会 1981-03-01
    03月16日-08号


    取得元: 熊本県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-05-26
    昭和56年 3月 定例会┌──────────────────┐│  第 八 号(三月十六日)    │└──────────────────┘ 昭  和 五十六年 熊本県議会三月定例会会議録   第八号―――――――――――――――――――――――――――昭和五十六年三月十六日(月曜日)   ――――――――――――――――――――   議事日程 第八号  昭和五十六年三月十六日(月曜日)午前十時開議 第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)   ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)      ―――――――○―――――――出席議員(五十一名)                 西 岡 良 平 君                 阿曽田   清 君                 三 角 保 之 君                 岩 永 米 人 君                 橋 本 太 郎 君                 松 家   博 君                 岩 下 榮 一 君                 下 川   亨 君                 林 田 幸 治 君                 児 玉 文 雄 君                 山 本 秀 久 君                 河 崎 敦 夫 君                 古 本 太 士 君                 渡 辺 知 博 君                 八 浪 知 行 君                 杉 森 猛 夫 君                 鏡   昭 二 君                 高 田 昭二郎 君                 柴 田 徳 義 君                 広 瀬 博 美 君                 古 閑 一 夫 君                 魚 住 汎 英 君                 馬 場 三 則 君                 平 川 和 人 君                 北 里 達之助 君                 金 子 康 男 君                 荒 木   斉 君                 井 上 栄 次 君                 竹 島   勇 君                 今 井   洸 君                 米 原 賢 士 君                 古 閑 三 博 君                 井ノ上 龍 生 君                 永 田 悦 雄 君                 宮 元 玄次郎 君                 甲 斐 孝 行 君                 八 木 繁 尚 君                 幸 山 繁 信 君                 池 田 定 行 君                 小 材   学 君                 岩 崎 六 郎 君                 沼 川 洋 一 君                 水 田 伸 三 君                 杉 村 国 夫 君                 今 村   来 君                 浦 田   勝 君                 小 谷 久爾夫 君                 橋 本 盈 雄 君                 増 田 英 夫 君                 中 村   晋 君                 酒 井 善 為 君欠席議員(四名)                 浜 崎 三 鶴 君                 斉 所 市 郎 君          (公務出張) 木 村 健 一 君                 倉 重 末 喜 君   ――――――――――――――――――――説明のため出席した者         知事      沢 田 一 精 君         副知事     藤 本 伸 哉 君         出納長     松 下   勝 君         総務部長    濱 田 一 成 君         企画開発部長  金 野 俊 美 君         福祉生活部長  山 下 寅 男 君         衛生部長    清 田 幸 雄 君         公害部長    高 松 光 昌 君         商工観光労働         部長      八 浪 道 雄 君         農政部長    原 田 富 夫 君         林務水産部長  松 本   登 君         土木部長    梅 野 倫 之 君         有明地域開発         局長      伴   正 善 君         公営企業管理者 松 永   徹 君         教育委員会         委員長     荒 川 辰 彦 君         教育長     外 村 次 郎 君         警察本部長   福 井 與 明 君         人事委員会         事務局長    下 林 政 寅 君         監査委員    中 田 敏 之 君   ――――――――――――――――――――事務局職員出席者         事務局長    川 上 和 彦         事務局次長   衛 藤 成一郎         議事課長    小 池 敏 之         議事課長補佐  辻     璋         主幹      山 下 勝 朗         参事      光 永 恭 子      ―――――――○―――――――  午前十時二十三分開議 ○議長(池田定行君) これより本日の会議を開きます。      ―――――――○――――――― △日程第一 一般質問 ○議長(池田定行君) 日程に従いまして日程第一、一昨日に引き続き一般質問を行います。下川亨君。  〔下川亨君登壇〕(拍手) ◆(下川亨君) おはようございます。民社党の下川亨でございます。質問の通告書に従いまして一般質問を行いますが、質問が大変欲張っておりまして、途中で早口になることがあるかもしれませんけれども、どうぞよろしく執行部の方々御答弁をお願いしたいと、かように思うわけでございます。なお答弁には、できるだけ簡潔明瞭な御答弁を心から希望いたして質問に入りたいと思います。 まず初めに、財政の硬直化と行政改革について、民社党の立場を明確にしながら知事にお尋ねをいたしたいと思います。 激動と不透明な時代と言われる八〇年代も二年目を迎えましたが、ますます緊迫する国際情勢、そして深刻化する内政上の諸問題を抱え、その打開のため、卓越した政治決断と実行とが強く求められております。その意味で、政治の責任が今日ほど大きな比重を持つに至ったことはないと思うものであります。 今年度の当初予算を見てみますと、歳入予算額四千五百十一億二百万円に対する自主財源は一千三百四十四億四千九百万円であり、その構成比は二九・八%となっており、前年度と全く同じ率であります。自主財源の増強についての改善の跡が見られないことは非常に残念なことであると思うものであります。また、県債の歳入に占める割合が今年度八・六%と、前年度の構成比の九・一%に比較して若干低下しているものの、その発行額は三百八十八億四千九百万円もの巨額となっております。この県債が前年度に比べ四億二千九百万円減額された反面、昭和五十一年度以降積み立ててきました県有施設整備基金を四十九億円も取り崩しており、今後の県財政にいささか危惧の念を抱くものであります。 地方の時代と言われる八〇年代において、地方の自主的な創意に基づいて主体性を持って県政を進めていく上で、自主財源の確保に努力することはもちろんでありますが、歳出面においての合理化がより重要ではないかと考えるものであります。自主財源比率の低さに加えて、歳出を一層窮屈にしているのが、公債費の二百九十二億三千二百万円であると思います。県債の発行額は、五十五年度末は二千二百億円となる見込みでありまして、これは県民一人当たりに換算いたしますと約十一万円の借金を抱えることとなるわけであり、財政の硬直化は、静かに、しかも着実に進み、県民生活を脅かしていると言っても過言ではないと思うものであります。 そこで、県が財政の硬直化を打開していくには、県みずからが減量経営に徹することがまず必要であり、ふくれ上がった行政機構のむだを省き、効率的な行政を行うため、余り必要でなくなった部署の整理や、慢性化、惰性化した政策により、多額の出費をしながら政策効果が十分でないものを洗い直し、財政の効率化を図ることが必要であり、すなわち行政機構の簡素化、効率化、むだな経費の徹底した節約、補助金等の整理合理化を積極的に進めることが必要であろうと考えるものであります。 時あたかも、きょう三月十六日は、第二次臨時行政調査会が発足する日であり、第二次臨時行政調査会の中心課題は、国民に対するサービス行政、民営移管、国と地方との行政分担などについての刷新改革案を立案することにあると言われております。他の県においても、審議会等を設置し、積極的に行政改革を進めておられるところもあるやに聞き及んでおります。財政が苦しいときだけに、予算編成に当たり、スクラップ・アンド・ビルドを行うなどの場当り的なことでお茶を濁すことでなく、やはり常時、組織、機構、事務または事業の見直しを通じて、行政改革についての基本原則を立てて、その上で予算措置をするという方策を具体的に考えなければならない時期が来ていると思うものであります。 そこで、まず財政問題につきましては、昭和五十六年度当初予算を見てみますと、国と同様に緊縮型予算となっておりますが、財政が苦しければ苦しいほど効率的で安上がりの行政を考えるべきであり、事務事業の徹底的な見直しなど財政面の抜本的な改革を行う必要があると考えますが、この点については、すでに各党の代表質問もあっており、知事の答弁もあっておりますので省略しますが、わが党としましても、今後ともこの点に一層の努力をされるよう強く要望をいたしておきたいと思います。 以上述べました観点から、本県の行政改革について知事の御所見を賜りたいと思うものであります。 次に、地方自治法の改正に関連してお尋ねをいたしたいと思います。 地方の行政改革といっても、国の法令、制度等により大きな制約を受けていることは周知のとおりであります。先日、公明党の沼川議員の代表質問の中で、地方の時代とはUFOのようだという長洲知事の話が紹介されましたが、その真意はともかく、地方の時代とは、すでに実現された現実ではなく、これから私たちが創意と工夫をこらして、ねばり強くその実現を図っていくべきものだと思うものであります。 その意味では、いま通常国会に地方自治法改正案が提出されようとしていることは画期的なことであると思うものであります。その内容は、監査制度の改善のほか、議会運営委員会制度参考人制度の設置を初め、議会の検査権に機関委任事務を加えること、さらに、地方自治体の利害に関する法令の制定、改廃について、内閣、国会への意見提出権を与え、これまでの陳情、要望を法的に根拠づけるとともに、内閣に対し、意見の趣旨を尊重して必要な措置を講ずるよう努力規定を設けているものであります。いわば地方の声を国政の場に反映していく法的根拠として、いわば地方の時代を具体的に実現していく大きな一歩であると思うものであります。 各省間の折衝も難航していると言われておりますが、地方の独自性を持ちつつ自主的に行政改革を進めていくためには、県としても、この法案の実現をバックアップしていくべきだと考えるものであります。この点について知事の御所見を賜りたいと思います。  〔知事沢田一精君登壇〕 ◎知事(沢田一精君) 二点についてお答えをいたします。 第一点は、行政機構の改革についてでございます。 健全な財政運営を図ってまいりますための行政改革については、本県におきましては、御承知のように、毎年七月の定期異動の時期に合わせまして事務や機構の見直しを行っておるところであります。必要に応じて行政事務改善審議会におきまして全庁的な立場から検討を加え、多様化していく新しい行政需要に対してどう対応していくか。むだを省き、必要な面に機構と人員を振り向けて重点的に行政が進められるようにいたしたいということで、毎年そのような見地から改正を行っておるところでございます。 御指摘のように、今般第二次臨時行政調査会も発足し、国においても行政の見直しが行われるということでありますので、本県におきましても、その動向を十分見ながら、今後とも、お話がありましたように、機構の簡素化、増員の抑制に努めてまいりたいと考えております。 しかしながら、一方におきましては、行政需要というものはますます増大し、住民の県行政に対する御要望も複雑多岐になってまいっております。そういう中で、できるだけ簡素な機構で十分に住民の皆さん方の要望にこたえていくことはなかなかにむずかしいことでございますが、国に対しましては、今後とも、安易に地方に新しい事務事業等を押しつけることがないように要望をしていかなければならないと思いますし、新しい時代に即して新しい事務をふやす場合におきましては、その財政的な裏づけと申しますか、いやしくも超過負担等を伴わないように強く要望をしていかなければならないと考えております。 いずれにいたしましても、今後とも住民の皆さん方の県政に対する御要望に十分おこたえいたしますと同時に、財政が将来にわたりまして健全性を損わないように十分慎重に配慮しながら運営を図ってまいりたいと考えておるところでございます。 第二番目に、地方自治法の改正についてのお尋ねでございます。 すでに新聞等でも報道されておりますとおり、今国会へ改正案が提案されようといたしておりますが、各省間におきまする意見の調整が難航しておる向きもあるようでございまして、その成り行きについて私どもは見守っておるところでございます。 改正案の内容につきましては、ただいまお話がありましたように、監査委員制度の整備、地方議会に関する制度の整備、国と地方団体との関係の改善等となっておりますが、いずれも、それぞれの地方団体が、公正で自主的に創造力を発揮しながら行財政を運営する上に必要なことであると考えております。 私は、かねてから、地方の時代にふさわしく、地方が地方における特性と創意を生かした行政を展開するには、ぜひ国の行政機構の見直しや、国と地方の事務権限の見直し等が必要であること等を、みずから、あるいは全国知事会等を通じて強く関係方面に申してまいったところでございますが、その意味におきましても、今回の地方自治法改正の動きは相当の前進であると大きな期待を持っておるところでございまして、今国会における成立を期待いたしておる次第でございます。  〔下川亨君登壇〕 ◆(下川亨君) ただいま知事の答弁でよくわかったわけですが、この歳入の伸び悩んでおる時期こそ、自主財源の確保はもとより、歳出面において行政改革等を通じ努力を払っていただきたい。 私は、いまの答弁の中で、事務に支障を来さないようにと、もっともなことだと思います。そのようなことで、知事の今後の行革に対する前向きの姿勢を心からお願いを申し上げておきたいと、かように思うわけです。また、いま一つ、地方自治法の政正ですが、やはり地方の時代の確立のためにも、この法案が通りますことを心からお願いしておきたいと、このように考えます。 次に、高齢者の福祉対策及び就労対策についてお尋ねを申し上げたいと思います。 厚生省人口問題研究所の推定人口によりますと、昭和六十五年には、六十五歳以上の人口が総人口に占める割合として一一%に達するのではないかと推計されているところであります。わが熊本県を見てみますと、昭和五十四年にすでに一一・五%と、全国平均を十年先行する形で高齢化社会を迎えているところであります。そのような流れの中で、高齢化社会における老人問題は、現行の老人福祉対策の単なる充実強化だけでは解決できるものではないと私は考えるものであります。 県当局においても、そのような意味から、深い御理解のもと、昨年八月一日から、高齢者福祉対策についての連絡調整のため、熊本県高齢者福祉対策推進会議を発足させ、その中で、老人問題を全県民的な課題として受けとめながら、連帯感あふれた地域福祉づくりを進められているところであり、高く評価するところであります。 現行の老人福祉対策の取り組みを見てみます中で、第一に、健康な老人のための生きがい対策、第二に、保健医療対策、第三に、寝たきり一人暮らし老人に対する在宅福祉対策、そしてまた、そのための施設対策、第四に、就労対策等々きわめてきめ細やかな配慮がなされておりますが、私は、その中から次の二点にしぼってお尋ねを申し上げたいと思います。 第一点目として、寝たきり老人等援護を要する方への老人対策であります。 寝たきりになるということは、本人のみならず家族全体に物心両面の負担を大きくすることは言うまでもありませんが、老人は、寝たきりの状態にあっても、自分の家で、また住みなれた故郷で、そして家族とともに生活することを強く希望していることと思うものであります。そのようなことから、私は、特別養護老人ホームや、あるいは老人病院等施設対策も重要施策であると思いますけれども、在宅福祉サービスの充実こそ今後最重要課題とすべきであろうと思うものであります。 現在、在宅の寝たきり老人に対する援護サービスとしては、ホームヘルプサービスまたは家庭奉仕員派遣対策がその中心となっているところであり、年々家庭奉仕員の増員は行われてきたところでありますが、ホームヘルプサービスは低所得者を対象とした家事援護が主体となっており、今後、派遣対象者のニーズが多様化、高度化する中でのサービスの対応、特に保健医療面からのサービス体制の整備、また入浴、給食等のニーズに対応する施策をどのように進めていかれるおつもりか。いま一つ、介護者の負担軽減を図るため、介護等に当たっている家庭に対する施策についての二点について、福祉生活部長の御答弁を賜りたいと思います。 次に、高齢者の就労対策について商工観光労働部長にお尋ねをいたしたいと思います。 高齢化が進行することは、とりもなおさず労働力構成が高齢化することとなるわけでありまして、今後、中高年層の労働生産性をどう高めていくのか、また雇用をどう拡大していくべきかが問題であると考えるものであります。 国においては、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法により、企業に対し、常用雇用労働者の六%以上の五十五歳以上の高年齢者を雇用する努力を課してその対策に当たっているところでありますが、しかしながら、本県における同法に基づく企業の高年齢者の雇用状況は、平均雇用率で五・六%となっており、全国の平均雇用率は六・二%と、若干ではありますが法定雇用率六%を上回っておることから、本県としてはまことに遺憾なことだと言わざるを得ないのであります。 そこで、県当局としては、今後さらに進展する高齢化社会の中で、老人を含めた高齢者の就労対策について――けさほどの報道によりますと、中高年雇用協の発表もあっておりますが――どのように進めていかれるおつもりか、商工観光労働部長の御所見をお伺いいたしたいと思います。 次に、続いて夜間保育の諸問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。 近年、乳幼児の夜間保育宿泊保育を行ういわゆるベビーホテルが大都市を中心に全国的に増加しており、その安全面や保育内容等について種々の問題があって大きな社会問題として取り上げられておるところでありますが、問題点につきましては、先日公明党の今井議員から本議場でも質問がありましたので、私は角度を変えて質問を申し上げたいと思います。 これらの問題の背景は、近年、婦人の就労の増加が著しく、また、その就労形態も昼夜間を問わないことなどのために、保育需要がきわめて多様化してきていることに起因していると考えるものであります。同時に、こうした保育需要に対し、現在の認可保育所の実態は、これに全面的に対応することができないでいることにもあるのではないかと考えられるものであります。 最近、特に母子家庭の中で夜間働いている人たちの間で、安心してわが子を預けられる夜間保育所が強く要請されているときでもあり、私は、夜間保育の諸問題に関して次の三点について福祉生活部長にお尋ねを申し上げます。 まず第一点目は、公立保育所夜間開放についてであります。 現行の認可保育所の保育時間は、おおむね八時間となっており、退園時間は十七時から十八時までとなっておりますが、これでは、先ほど申し上げました母子家庭においては、保育需要に十分対応することができないものと考えるものであります。 先日の今井議員への答弁によりますと、国では、都市部など夜間保育需要の高い地域において、保育能力の高い保育所を選定してモデルケースとして夜間保育にも取り組む姿勢を示しておられるそうであります。大変結構なことであり、一日も早く実現することを期待するものでありますが、何分にも、この問題には時間がかかりそうでもあり、また本県がモデルケース指定地域になる保証も現在ではないと思うものであります。 そのようなことから、暫定的にでも、県において、市町村と協力して、夜間保育需要の高い熊本、市八代市などでは、公立保育所夜間開放など、夜間保育に取り組む必要があるのではないかと思うものであります。御所見を賜りたいと思います。 第二番目に、事業所内保育施設助成制度利用のPRについてお尋ねをいたします。 現在、認可保育所ではないが、事業所内保育所院内保育所施設助成制度日本児童手当協会の手で設けられており、その施設整備などに対して国が助成をしているわけでありますが、案外この制度は一般に知られていないのではないかと思うものであります。これら制度の利用について、さらに積極的に取り組んでみてはどうかと思うものであります。 第三番目に、夜間保育に係る母子福祉対策についてであります。 冒頭においても述べましたが、特に、母子家庭の母は、母親であるとともに父親としての役割りも果たさなければならず、育児、家計維持のため働かなければならないわけでありまして、特別の技術を持たないことやら収入面から、手っ取り早いいわゆるサービス業に従事する者が必然的に多く、そのため夜間保育が必要となってくるわけであると思うものであります。 専門家の間では、やはり夜間保育は、生活環境に左右されやすい乳幼児にとって好ましくなく、真にやむを得ない場合に限定すべきであるとの意見もあり、好ましい姿、望ましい姿となるために、母子家庭の母の雇用条件の整備、たとえば技能習得などを図りながら、夜間勤務から昼間勤務への転換等についても、母子福祉対策の上から重点施策として取り組むべきであると考えるものであります。 以上、三点について福祉生活部長の御答弁を賜りたいと思います。  〔福祉生活部長山下寅男君登壇〕 ◎福祉生活部長(山下寅男君) 高齢者の福祉対策夜間保育の諸問題につきましてお尋ねございましたが、まず高齢者の福祉対策につきまして御答弁を申し上げたいと思います。 本県の場合は、全国平均よりも先行いたしまして高齢化が進んでおりますことはお説のとおりでございます。このため、県といたしましては、これに対応いたしまして、お話にもありましたようにいろいろな施策を進めてまいっておるところでございます。 一つには、高齢者の生きがい対策、あるいは保健医療対策、さらには在宅の寝たきりなど援護を必要といたします老人に対する各種の在宅援護対策、あるいは社会福祉施設の整備などでございます。 特に、お尋ねの寝たきり老人に対します在宅福祉の充実につきましては、今後一層力を入れていく必要があると考えまして、昨年七月、全県下の民生委員の方々の御協力を得まして、その実態の調査をいたしたところでございます。 その結果によりますと、御指摘にもございましたが、入浴、食事、排便、着脱衣など身の回り介助や、洗濯、寝具乾燥等の世話が、家族の方々にとりましていろいろな面で大きな負担になっていること、また、病気や旅行などの場合に介護をかわって見てくれる人がいないとか、あるいは日常生活に必要な用具を給付してほしいとか、介護、看護の知識、技術につきましての講習を受けたいといったようないろいろな要望が強いわけでございます。 このため、五十六年度におきましては、地域福祉モデル市町村を中心といたしまして、新たに、家庭看護指導のための訪問看護サービス、それから家庭奉仕員等によります洗濯サービスあるいは寝具乾燥サービス、入浴サービス等の事業を単県事業といたしまして実施をしたいと考えまして、予算を計上いたしておるところでございます。 また、厚生省といたしましても、五十六年度新規に国庫補助事業の予算を計上いたしておりますので、これには給食サービスまで含まれておるわけでございますが、この補助事業の導入を、県内一市町村をモデルといたしまして、ぜひ導入を図りたいというように考えておるところでございます。 さらに、寝たきり老人の方々の介護に当たります家族の負担軽減を図りますためには、従来から、日常生活用具といたしまして、特殊寝台とか、あるいはエアーパット――これは床ずれ防止のためのマットでございますが――そうしたものとか、腰かけ便座、浴槽、湯沸かし器など、そうした給付事業を実施いたしておるわけでございますけれども、その拡充を今後とも図ってまいりたいと考えておるところでございます。 また、介護者が疾病とか旅行とか事故などによりまして一時的に介護ができなくなります場合に、老人を一時特別養護老人ホームにお預けをしてもらうという、いわゆる寝たきり老人短期保護事業、これをぜひその活用を促進するなどいたしまして、市町村や社会福祉施設の御協力も得ながら今後さらに積極的に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。 次の夜間保育の諸問題についてでございますが、三点について御意見、御提言をいただいたところでございます。 まず第一点の、公立保育所夜間開放につきましてでございますが、最近大きな社会問題となっておりますいわゆるベビーホテル対策につきましては、お話にもありましたように、現在国の段階におきましてもいろいろ検討がなされておるわけでございます。 その一つといたしまして、都市部など夜間保育需要の高い一部地域におきまして、やむを得ない場合に限定いたしました夜間保育所の設置につきましての問題、これも検討されているようでございます。 御質問は、それじゃ国の対応を待ってたんじゃ時間がかかる、暫定的にでも県でひとつ考えてみたらどうかという御提言であったと思うわけでございますが、現段階といたしましては、一つには、本県におきます夜間保育需要の実態というのがどうであるのか、その実態を、近く行います一斉点検を通じて把握をしてみたいというように考えております。 また、保育所の設備などの面で直ちに夜間保育に対応できるのかどうか、どういう整備を必要とするのかというような問題、あるいは保母などの夜間勤務の問題、それからその確保が一体できるかどうかという問題、そうした問題等につきまして、市町村などの意見も聞きながら今後検討をしてみたいと考えておるところでございます。 次に、事業所内保育所制度利用のPRについてでございますが、夜間保育需要は特別の事業形態に起因するものがかなりあるわけでございます。これに対応する一つの制度といたしまして、御提言の事業所内保育あるいは院内保育という制度がございますので、その設置の利用につきまして周知徹底を図ってまいりたいと考えております。 現在、県内におきましては二十八カ所――昨年の五月現在でございますが――二十八カ所の院内保育所あるいは事業内保育所がございます。これは電電公社あるいは病院、それから二次、三次産業の事業所関係におきましても設けております実績がございます。御案内のように、この院内保育所を設置いたします対象者といたしましては、厚生年金保険の適用事業所の事業種があるわけでございます。そうした面で、ただいまも申し上げますように、今後その設置及び利用につきまして周知を図るなど、必要な指導を実施してまいりたいと考えておるところでございます。 三番目の夜間保育に係ります母子福祉対策についてでございますが、乳幼児期が一生を左右いたします最も重要な時期でありますことはお説のとおりでございます。したがいまして、夜間に就労しております婦人の方々が、昼間の職業に転換をして自立をしていきますための施策が必要であるわけでございます。 このため、県といたしましては、従来から母子対策といたしまして、一つには、調理員あるいはホームヘルパーの資格を取りますための講習会、あるいは簿記の講習会、そうした母子家庭の自立促進事業を実施いたしておるわけでございます。それからもう一つは、自分で仕事を始めたいというような皆さん方にも、御案内のように母子福祉資金の貸し付けを実施いたしておるところでございます。 こうした母子対策を今後とも活用いたしまして、そしてできるだけ昼間に就労できますような、そういう機会を持つことができるように、県といたしましては、これらの施策の充実強化につきまして今後とも努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。  〔商工観光労働部長八浪道雄君登壇〕 ◎商工観光労働部長(八浪道雄君) 高齢者の就労対策についてお答えいたします。 高齢化の急速な進展と高年齢者の雇用失業情勢を考慮します場合、高年齢者に安定した雇用の場を確保しますことは、きわめて重要な課題であると考えております。 このため、県としましては、第一に、高年齢者雇用率の達成につきまして従来から指導しているところでございますが、特に雇用率の低い企業に対しましては、雇用率の達成計画を作成させて、高年齢者の計画的受け入れをさらに推進してまいりたいと考えております。 第二に、県下の主要公共職業安定所に、中高年齢者職業相談員、高年齢者雇用開発推進員を設置しているところでごさいますが、今後、さらに職業紹介体制の充実に努め、中高年齢者の雇用の確保に一層努めてまいることといたしております。 第三に、高年齢者等の雇用に当たりましては、事業主に中高年齢者雇用開発給付金や特定求職者雇用奨励金等を支給しまして雇用の促進に努めているわけでございますが、これらの給付金につきましては、中央職業安定審議会の建議によりまして、近く統廃合の上充実されることとなっておりますので、今後この制度を一層効果的に活用してまいりたいと考えております。 第四に、高齢化の進展に対応いたしまして、昭和六十年度までに六十歳定年を一般化するよう、関係機関と連携をいたしまして今後とも啓発指導に努めてまいることといたしております。 第五に、高年齢者の雇用の安定を図りますためには、労使双方の理解と社会一般の認識が必要でございますので、民間自体で、中高年齢者の雇用問題の啓発、研究、調査に努めます熊本県中高年齢者雇用開発協会――仮称でございますが、これを五十六年度に設置することとなっておりますので、これに対しまして県としても助成指導いたすことといたしております。 さらに、六十歳台の人々の働く意欲を生かしますため、国においてシルバー人材センター制度が設けられておりますので、該当の市に対し、センターの設置とその活用を促進してまいりたいと、このように考えております。  〔下川亨君登壇〕 ◆(下川亨君) 寝たきり老人の対策ですが、介護人あたりは本当に大変なことだと思います。物心両面での誠意のある施策を今後講じていかれるよう心から希望いたしておきます。 また、夜間保育につきましてですが、関係機関との連絡を密にしながら今後の問題としていただくようでございます。夜間勤務ということで、労働基準法その他いろいろの制約等この夜間保育には問題が多いと思いますが、前向きに取り組んでいただきたい。 また、労働基準法上の問題点の中でも、保母さんの労働条件があります。しかし、最近特に保父さんの進出も目覚ましいものがあるわけです。保父さんの雇用の場にも夜間保育の場を適用していただき、解決に当たっていただきたいと思います。 なお、ベビーホテルがいいとか悪いとか、施設がどうだこうだということよりも前に、私は、母子福祉の原点に立って諸施策を進めていただきたい。これが一番解決の方法ではなかろうかと、このように感じるわけでございます。 時間の都合で先に進ませていただきます。 次は、自転車の道路敷の不法占用について質問を申し上げておきたいと思います。 省エネ時代に入った今日、大衆の足として普及した自動車も、民間を初めとし、官公庁においても低燃費の小型車へと移行しており、特に、最近においては近距離用の足として、省エネはもとより、健康増進と相まって復権したのが自転車ではなかろうかと思うものであります。 現在、統計によりますと、一家族当たり全国平均一・五台とさえ言われており、本県においても、自転車――これは単車も含んでおりますが、――その統計におきまして四十九年度より約七四%の増加となっており、数字が示すとおり増加の一途をたどっていることがおわかりいただけると思うものであります。 このようなことから、近年、都市部において、特に通勤通学、買い物等々のための利用者は、駅周辺、商店街へと自転車を乗り入れし、大量の自転車が駐車または放置される現況下において、大きな社会問題となり、乱雑、身勝手な路上放置等に対する投書が新聞にも報道されているところであり、高度経済成長が生み出したゆゆしき副産物であると思うものであります。 問題となる原因についてはいろいろあると思いますが、その一つに、原因発生者の自転車駐車場に対する配慮が欠けていることもあり、いま一つは、自転車使用者のモラルの問題、また一つには、行政指導と手だてなどが挙げられると思うものであります。 このように社会問題として、総理府も、昭和五十二年一月二十三日、その交通対策本部において、自転車駐車対策の推進について本部決定を行い、関係各省庁に対し、その対策の強力な推進を図るよう文書通達を行い、また自転車駐車対策推進要領なるものを定め、地方公共団体等の自転車駐車対策に対する手だてを行なってまいったところであります。その要領なるものは、大きく分けまして、第一に、自転車駐車対策推進計画の策定を掲げてあり、第二に、自転車駐車場の整備、第三に、駐車秩序の確立を挙げ、この対策に当たってこられたのでありますが、今回、この要領をもととし、昭和五十五年十一月二十五日法律第百八十七号、自転車の安全利用の促進及び自転車駐車場の整備に関する法律が制定され、公布されたことは周知のとおりであります。 このように、法律制定に至るほど社会問題となった自転車に関する諸問題に対し、政府当局が真剣に取り組んでいる今日、県当局の取り組みに対し、私は真剣さが足りないのではないかと思うものであります。この問題は、地方公共団体においてと明記されておりますが、市町村において対処すべき問題かもしれません。しかし、現実において、熊本市の大動脈とも言える県道熊本玉名線、いわゆる電車通りの水道町交差点の福祉会館前より下通り商店街入り口に至るまでの歩道上に、昼夜を問わず駐車をしているあの洪水を見ていただければ、私の申し上げることがよくおわかりいただけるものだと思うものであります。 私は、そこで、この歩道上に無秩序に駐車されている自転車について、それぞれの立場より御答弁を賜りたいと思うものであります。 まず、土木部長にお尋ねいたしますが、県道道路敷の不法占用について、どのような対策、指導がなされてきたのか。 次に、警察本部長にお尋ねをいたしますが、先ほど申し上げました昭和五十三年一月二十三日の通達以降、同じくどのような対策、指導がなされてきたのか。また、特に警察本部長には、道路交通法より見た御見解を賜りたいと思うものであります。 次に、私は、この問題に関連し、企業局長に問題を提起しながらお尋ねをいたしたいと思います。 私は、この問題について、行政の前向きの姿勢のないことを考えながら、いままさに庶民の足と化した弱者交通機関であるところの自転車に対し、円満なる解決へとはなかなか事が運ばないのではないかとの感がいたすものであります。また、今後の問題として、現在の姿勢より推測して、さきに公布された法律、自転車の安全利用の促進及び自転車駐車場の整備に関する法律第五条の第一項並びに第二項遂行のための行政指導にも一抹の不安さえ感じるものであります。 そのような観点から、私は、現在県企業局の事業でありますところの水道町所在の県営駐車場の一部目的変更を所属委員会において提議いたしたところでありますが、検討の結果ということで資料をいただいたわけであります。その資料によりますと、二十二台の収容減少による損金及び変更に伴う設備費、人件費等々を年間合計し、その金額を一千四百余万円と推定し、この損金を自転車駐車場収益で補うと仮定した場合には、一〇〇%稼働において一台当たり一日百七十九円の高額徴収単価となるとの試算算定がなされ、不採算であるとの結論のもと、一部目的変更に難色を示しておられるところであります。 私は、ここが問題であると思うものであります。確かに企業は利益の追求をしなければなりません。しかし、時と場合によっては、公営の立場から赤字を出すことがあってもよいのではないでしょうか。どうしても不採算による一部目的変更が不可能であれば、当面する問題として、法の施行令が出るまでの期間でも、一階部分の二十二台スペースを自転車駐車場として、現況のまま無人で無施設のまま無料開放など御考慮いただけないものか。企業局長の前向きの姿勢を期待し、御答弁を賜りたいと思うものであります。  〔土木部長梅野倫之君登壇〕 ◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 お尋ねの放置自転車の対策でございますが、歩行者の安全通行を図るために、県警や熊本市などの協力を得ながら、交通安全運動の一環として、単車、自転車所有者に対する放置防止につきましては、機会あるごとに指導、啓蒙を行っているところでございます。たとえて申しますと、荷札作戦と申しまして、放置されておる自転車に荷札をつけまして、その期日あるいは「直ちに撤去してください」というふうなことを書きまして、指導あるいは警告を行っているところでございます。 特に、長期間放置されている自転車の取り扱いでございますが、処理対策上、法律的に隘路もあるので、目下国や関係機関と協議中でございますが、放置自転車の対策につきましては、駐車場不足などの問題があって実効が上がっていないのが現況でございます。 そこで対策でございますが、仰せのとおり、第一は、やはり適切な場所に駐車場を求めること、第二は、商店街等の民間みずからによる駐車場の設置、第三は、自転車使用者のモラルの向上にあると考えられますので、熊本市ともさらに協議を重ね、積極的に取り組みたいと考えております。 また、お示しの自転車駐車場の整備に関する法律が近く施行される予定でございますので、政令の制定を踏まえまして、関係機関と検討してまいりたいと考えております。  〔警察本部長福井與明君登壇〕 ◎警察本部長(福井與明君) 自転車というものが、近年手軽な交通機関として見直され、利用者がふえておりますことと相まって、商店街や駅周辺等に大量の自転車が置かれて、道路交通の妨げになっておる事態が現出しておることは御指摘のとおりであります。 これについての道路交通法上の見解を示せということでございますので、お答えいたしますが、自転車は道路交通法上の車両に当たります。したがいまして、自転車を道路上に放置しておくことは、道路交通法の第二条一項十八号の駐車に該当いたします。 そこで、ごくしゃくし定規に申しますと、駐車の場所や駐車の状態によっては、道路交通法の四十四条、四十五条または四十七条の違反が成立するわけでございます。罰則もございます。 ところで、道路交通法上は、反則行為制度というものが現在取り入れられておりまして、駐車、停車違反につきましても、大型車あるいは二輪車等は六千円なり三千円の反則金を支払えば、一応それ以上の刑事訴追はされないことになっているわけでございますが、自転車、荷車等の軽車両については、この反則行為制度から除かれておりますので、しゃくし定規に申しますと、いきなり刑事罰へ持っていくという――罰金ということになります。これでは、あくまでも法の均衡と申しますか、なりませんので、警告指導によってまいっておるわけでございます。 いわゆる家庭の主婦がスーパーマーケットに買い物に来たり、高校生や中学生が本屋に立ち寄って自転車を置いておくというのが実態でございますから、そういう交通弱者に対しては警告指導でもって現在臨んでおるわけでございます。 ところで、五月に自転車の安全利用の促進及び自転車駐車場の整備に関する法律が施行になりますと、百貨店やスーパーマーケット、銀行、遊技場等、自転車の大量需要を発生させる施設の設置者は、その施設を利用する人のための自転車駐車場を、施設内またはその施設の敷地内または施設の周辺に設置するよう努めなければならないとなっておりますので、関係法令の整備状況等を十分にらみながら関係向きと協力をして、さらに今後指導を徹底してまいりたいと、かように考えております。  〔公営企業管理者松永徹君登壇〕 ◎公営企業管理者(松永徹君) 御答弁を申し上げます。 駐車場の利用についてのお尋ねでございましたが、現在つくっております自動車駐車場の関係につきましては、去る三月に営業を開始いたしました。議会の方の御承認をいただいて、自動車交通関係を通して、都市機能の充実を図ろうということでつくらせていただいたわけでございますが、幸いにしまして、ここ一年の経過を見ておりますと、おおむねいままで予定どおりの目標に近い結果が出ております。ただ、ウィークデー等につきましてまだ問題もございますので、この点、企業努力をさらに重ねていこうというふうに考えておるところでございます。 ただ、いま御提案がございましたように、あの周辺につきましては、確かに自転車駐車場ということにつきまして非常にいろいろ問題をかもしておるということも私ども十分存じておるわけでございますが、ただ当面の問題としましては、私どもとしては、駐車場を現在の使用目的に沿いまして十分の機能を発揮させるということが第一義であろうというふうに考えながら仕事をやっているわけでございますが、ただ、いま御提案ありました駐車場の開放ということになりますと、やはり地方公営企業法の独立採算の原則もございまして、私どもにとりましてはなかなか頭の痛い問題でございます。 ただいま警察本部あるいは土木部の方からも御答弁がありましたわけでございますが、それぞれ交通行政を担当されます部局で、いろいろあの辺の対策について御検討もいただいているようでございます。したがいまして、その辺の結果をいただきまして、私どもとしての対応の仕方、この辺も研究させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  〔下川亨君登壇〕 ◆(下川亨君) ただいま三人の方から御答弁いただいたわけですが、わかったようなわからぬような、全く前向きどころか後ろ向きみたいな答弁に聞こえてならなかったわけです。解釈の相違と思いますけれども、要するに行政がこの問題に真剣に取り組まなければ自転車の放置問題は片づかないと、このように思うわけです。法律がどうだ、何がどうだということだけでは片づかないと思うわけです。私は道交法上からこれを徹底的に取り締まれと言うておるわけではないわけです。しかし、現況が、あのように弱小交通機関を利用しなければならない現下の状況下において、行政がどのように手を差し伸べるかということが一番大事ではなかろうかと、このように思います。 要するに、受けざらがない、自転車駐車場があの付近にないために、あのような現象が起きているのだということを念頭に置きながら今後の対応に取り組んでいただきたい。また、駐車場の一部使用目的変更については、公営企業法とか大変むずかしい制約もあるかと思います。しかし、わずかな赤字が出るということ、わずかなことで済むことであれば、財政の方から会計補てんをするとか、そのようなことでも解決がつくのではないかと思います。 また、あそこの道路上――いつだったか新聞にも出ておりましたが、身障者対策として黄色のタイルを張っております。このタイルの上に現実に自転車が乗っており、歩行者は大変――健康な者でも危ない状況下の中で、身障者には特にあそこは交通の支障を来しておるところです。 この質問に当たって、私は、夜の十二時、そして朝の八時半、夕方の五時と三度ほど、二、三日あそこを通ってみました。夜中の十二時に、驚くなかれ、自転車の台数、いま申し上げましたところ、八十六台の自転車――単車も含みますが――とまっております。また朝八時半、原因発生者と言いますが、鶴屋、寿屋、それから城屋といろいろありますけれども、原因発生者がオープンの前の八時半に、すでに四百台の自転車がとまっておったこともあるわけです。これは、どのような方があそこに持ってこられたのか、まだ私も調査不十分ですけれども、そのような現状、駐車場が本当に不足をしているのだということを考えてもらいたい、このように思います。 また、あそこの管理をしておられる――自発的な管理ですが――自発的な管理をしておられる方と会話を持つ機会を得たわけですけれども、特に学生が横着でかなわないということを言うております。あそこの歩道上には「駐車禁止 歩道上に自動車、二輪車及び自転車を置くことは道路交通法違反です」という熊本北警察署の看板が置いてあります。学生に「このような看板が目に入らないのか」ということを言うと、「おっさん、何の権限でそういうことを言うかいた」と言うて、この看板にわざわざぶっつけるような学生がおるのだそうです。しかも、この学生の大半が、熊日の裏にあります武道館ですか、あそこに行く学生だそうです。スポーツを愛好し、武道を習いながら心身の鍛練をするべき学生が、このような態度に出る。これは教育委員会も十二分にこの問題は考えていただきたい、このように考えます。 時間も進んでおりますので、次に、地図混乱地域について土木部長にお尋ねをいたしたいと思います。地図混乱地域の解消でございますが、県道戸島熊本線の道路についてお尋ねをいたします。 この道路は、熊本市の戸島町を起点として、砂取小学校前までの道路でありますが、御承知のとおり、近年における市街地発展の傾向を見ますと、主として東北部に拡大いたしており、この道路の重要性はますます増大し、昭和五十五年十月の自動車交通量は一日に約一万一千台にも達しておるやに聞き及んでおります。 しかるに、本道路のほぼ中央位置に当たります熊本市健軍町灰塚五つ角から、同健軍町下油称の旧熊本空港入り口、通称新外交差点までの約一キロに代表されるように、道路の係る土地の権原等について、その実態を見てみますと、まず第一に、熊本地方法務局備えつけの地図、いわゆる字図と現地の実態とは、その大半の土地の区域が全く符合していないのであります。さらに、これを具体的に申し上げますと、現県道は、ほぼ直線の道路であるにもかかわらず、道路敷とみなされる一部の土地を字図の上で拾い結んでみますと、蛇行もはなはだしく、また接続できない状態となっております。すなわち、字図の上では、道路はとぎれとぎれの県道ということになっておるわけであります。 第二に、道路区域の土地の権原についてみますと、その大半が登記簿上道路管理者の所有となっておらず、いわば未登記のままになっているということです。 第三に、県道をはさむ周辺地域であります区域は、面積にして約四十五ヘクタール、筆数にして約千四百筆ほどありますが、ただいま申し上げたとおり、字図と現地がほとんど符号しない、いわゆる地図混乱地域となっているのであります。 このように地図混乱地域となった原因は、幾つかの要因があると思うのでありますが、主なものとして、本地域が戦時中軍用地として使用するため、旧筆界を無視した造成工事にあると考えられ、戦後旧地主に返還されたものの、在来の区域への復興がなされなかったことに起因しているのが、その主なものと言わざるを得ないのであります。 以来、戦後三十六年を経過し、この土地一帯は、市街地の拡大とともに市東部における優良宅地として利用され、目覚ましい発展を遂げる素地を持ちながら、いままで申し上げましたような本地域の持つ特殊事情は、これを利用する住民にとって著しく不利益となるばかりでなく過重な負担となり、いまだこの土地は終戦未処理地帯となっているのであります。 昭和三十七年に制定された住居表示に関する法律実施上の障害のほか、土地の売買、所有権及び所有権以外の権利の設定時における不利益等、県道の未登記にしてもこのためと思われますが、早急に解決することが本地域の有効な土地利用につながることと思うのであります。 その手法はいろいろとあり、それぞれ相当の問題点を含んでおり、かつ今後調査研究を要する事項もあると思いますが、さきに述べました実態を踏まえ、熊本市行政上の問題であるかもしれませんが、県道敷のこともあり、県としてどのように対処されるおつもりか、土木部長の御所見を賜りたいと思うものであります。  〔土木部長梅野倫之君登壇〕 ◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。地図混乱地域の解消でございますが、御質問のあった県道戸島熊本線の件でございます。 本路線は、大正元年に、当時の健軍村でございましたが、村道として認定されたものでございます。次に昭和五年に、これを戸島熊本線として県道に認定しております。村道から県道に昇格した当時の経緯もありまして、その大半の区域が未登記であることはお示しのとおりでございます。 県といたしましても、これら未登記土地の解消に努力をしているところでございますが、人々の土地に対する権利意識の向上、さらには膨大な事務量がありますので、必ずしもスムーズにいっていないのが現状でございます。 特に、御指摘の当該土地でございますが、県下でも有数な字図の混乱地域として法務局が指定した地域でございます。道路区域内の土地の権原取得には、地域全体にわたって大幅な字図の変更を必要といたしております。単に道路区域内に限っての字図及び登記処理につきましては、きわめて困難であると考えております。 なお、これらの諸々の問題を解決するため、法務局では昭和五十四年から、その実態調査及び新しい地図の作成のため、百六カ所の基準点の設置について完了している段階でございますが、混乱地域の解消までには、なお相当年限が必要じゃないかと考えております。 また、地図の変更の一方法としまして、たとえば土地区画整理事業がございますが、地図変更のみの区画整理事業は、現在の制度では困難な問題が多いので、県あるいは法務局、市と協力して今後この問題については研究してまいりたいと考えております。  〔下川亨君登壇〕 ◆(下川亨君) 道路台帳の整備、そして未登記の問題等々この道路には多くを含んでおるわけでございます。 そのようなことで、道路だけ字図の変更ということはできないわけで、私は、そのためにも「周辺」という言葉を使ったわけです。周辺一体となってあの地域をしなければ解決をしない。そのためには、いま区画整理事業が困難であるということもおっしゃいました。法務局の方の職権による整備もしくは、ただいま申し上げられた区画整理、それから現況区画整理、いろいろ方法はあると思うわけです。そのようなことで、県の問題があり、住民の問題があります。三者会議、四者会議しながら解決を続けていかなければ、永久にこの道路は未登記であり、また登記上この道路は、字図の中では、とぎれとぎれの道路、道路の形態をなさない図面が将来とも残るわけです。前向きに御検討をいただいて早急な解決をお願いしたいと、このように思います。 次に、教育問題に移らせていただきます。 当面する教育問題の中から、私は常々、国家の興隆と民族の繁栄をもたらすものは教育をおいてほかにはないと、このように考えるものであります。それだけに、教育の現状や、青少年の思想、そして動向に深い関心を寄せながら、私は私なりに、PTA活動、議会活動を通じて、次代を担う青少年の健全育成を問いただし、また努力を続けてきたつもりであります。 ところが、昨年末、総理府から発表された「将来選択期における青少年の意識調査」を見ますに、まさに慄然たる思いがしたのであります。その内容については、すでに御承知のことと思いますが、改めてその一部を紹介してみたいと思うものであります。「望んでいる暮らし方」の項で、トップは「金や名誉を考えずに自分の趣味に合った暮らし方をする」というのが五三%。「その日その日をのんきに暮らす」というのが一九%で第二位。「どこまでも清く正しく暮らす」が七%。「勉強して名をあげる」が四%。「社会のためにすべてを捧げて暮らす」に至っては、わずかに二%にすぎないという結果が出ております。また「生きがいを感ずることがあるか」という項目では、実に二八%の青少年が「感ずることはない」と答えております。また「感ずることがある」と答えた者の中でも、「勉強や仕事に打ち込んでいる時」が一五%、「社会のために役立つことをしている時」については四%という低さにとどまっていることも報告をされております。 私は、およそ青春とは、遠大な理想を胸に抱き、燃えるような情熱を持って目標達成に全力を傾注する姿を期待していたものでありますが、これらの調査結果は、われわれが期待する青少年像とはほど遠く、趣味に合った暮らし方を望む者が過半数を占め、生きがいを感じていない者が三〇%の多きに達しているこの調査報告に基づき、改めて考え直さなければならない時期が来ているのではないかと思うものであります。 この調査対象となった十五歳から十九歳までの青少年は、わが国の高度経済成長期の最中であります昭和三十年代後半に生をうけ、困難らしい困難も体験しないままに成長した若者であり、みずからいよいよ自立すべき年齢に達して、安易な生活を望んだり、無気力、無感動の中に眠り込んだりしているのも、世相の流れの中で確かに同情すべき点もあるかとも思うものであります。しかしながら、このことを、物の豊かさがもたらした時代の流れの中で、当然のこととして一笑に付してしまうことはできないと思います。事態はまさに深刻であり、極言するならば、わが国の前途はまさに憂うべき状況にあると言っても過言ではないと思うのは私一人ではないと思うものであります。 人間教育が、社会、家庭、学校の三者一体となってなされねばならないことは論をまたないところでありますが、人間の生きがいや徳性の涵養は、青少年期、特に義務教育の間になされるべきであり、またそれが最も効果的であると私は考えるものであります。いまこそ教育の原点に返り、人間形成のための教育という観点に立って、教育を見直すべきときが来ているのではないでしょうか。 教育委員長は、この調査結果に基づいてどのような御見解を持っておられるのか、御所見を賜りたいと思うものであります。また、学校教育で、生がい教育をどのように推進しようとしておられるのかをあわせて御答弁賜りたいと思います。 次に、教師の資質の向上についてお尋ねをいたします。 教育の中心は、あくまで人であり、かつて夏目漱石先生が第五高等学校の生徒諸君に「教育の大本は師弟の和熟にあり」という言葉を贈っておられますが、これは、いみじくも教師のあるべき姿を語り尽くしていると思うものであります。教師と児童生徒が強い信頼関係で結ばれ、互いに手を取り合い、苦楽をともにしてこそ初めて教育は実を結ぶものであると私は確信するものであります。 ところが、先ほど申し上げました調査結果によりますと、学校に対して不満を持っている者が一七%に達しており、その理由の主なものは、「教師に親しみが持てない」「教師に熱意が足りない」「教え方が下手である」といった教師批判が多く見られております。現在大きな社会問題となっている校内暴力、特に教師に対する暴力も、私は率直にこのような教師不信を背景として起こってきた事例ではないかと思うものであります。 教師は専門職であり、その職責はきわめて重大であり、教師が絶えず研修に努め、厳しく、しかも温かい愛情で導くならば、児童生徒はもちろん、保護者や地域社会の信頼を得ることも決してむずかしいことではないと考えます。尊敬すべきりっぱな教師もたくさんおられることは十分承知いたしておりますが、一部にこのような教師批判があることもまた事実であります。教師一人一人が、みずからの姿勢を謙虚に反省したり、教師のあるべき道を学んだりする機会を与えることは、県教育委員会の責務であると私は考えるものであります。 そこで、県教育委員会は、教師の資質の向上のためにどのような措置を講じておられるのか、また、教師のあるべき姿をどのように考えておられるのか、教育委員長の御見解を賜りたいと思います。 次に、教育長にお尋ねをいたしたいと思います。文化財の保護に関連して、要望を交えながら質問を申し上げたいと思います。 文化財は、郷土の長い歴史の中で生まれ、私たちの祖先の英知によって創造され、たゆまぬ努力によって今日まで受け継がれてまいりました。このような文化財は、県民の大切な財産であり、私たちは、それを通じて本県の歴史を知り、先人の偉業をしのぶことができるとともに、将来の文化向上の基礎となるものとして重要な意義を持っているものであると思います。 昭和二十年の敗戦というわが国の大変革は、古い物は何でも破壊するという風潮を生み、混乱と疲弊は、文化財を大切に守ろうという意識を喪失させ、文化財の保護にとって憂慮すべき事態となったわけでありますが、そのようなときに法隆寺金堂の失火という重大な事件が起こり、これを契機に、旧来の保護制度を統合整理して、今日の文化財保護法の制定を見たことは周知のとおりであります。 その後、わが国の高度経済成長は、私たちに物質的な生活の豊かさをもたらしましたが、反面では、相次ぐ開発によって、かけがえのない自然や埋蔵文化財が失われるという事態を生じてきたのであります。 今日よく、文化の時代ということが言われますが、これは、私たちが追い求めてきた物質的豊かさだけでは人間の幸せは満足されない、もっともっと内面的な充実が必要だという価値観の変化を言いあらわしているものと考えるものであります。こういうときこそ、私たちの今日の文化生活の基盤とも言える文化財について考えてみることも、新しい豊かさを目指す県政を築く上でゆるがせにできないことであろうと思うものであります。 ところで、県内には二千になんなんとする国、県、市等の指定文化財が点在し、指定外の文化的遺産は、これに数倍するものがあるのではないかと思うものであります。しかしながら、熊本城などの著名なものを除けば、私たちには、どのようなものがどこにあるのかわからないというのが、残念ながら実情であると申さざるを得ません。これでは、いかに文化財保護の重要さを説いても、まさに馬の耳に念仏であり、まず、このような文化財の所在とその価値を広く県民に周知させることが、文化財を守り、これを次代の人々へ引き継いでいくための基本であり要諦であると考えるものであります。 そこで、私は、国、県、市町村の文化財の目録を総合的に整備し、また無形文化財については、スライド化、ビデオ化などを図り、これを新しく建設計画がなされておりますところの県立図書館に備えつけ、県民の利用便を図ってはどうかと考えるものでありますが、そのようなお考えがおありかどうか、教育長にお尋ねをいたしておきたいと思います。  〔教育委員会委員長荒川辰彦君登壇〕 ◎教育委員会委員長(荒川辰彦君) 当面する教育の諸問題について、お尋ねの第一、生きがい教育については、御意見のとおり、現代の青少年が生きがいを見失っているかのような状態は、次代の日本を背負う者のあり方としてまことに寒心にたえないところでありまして、教育は人間形成の観点に立って見直すべきであるという御主張については全く同感でございます。 現在、学校教育においては、小学校を手初めに、逐次、中学、高校と年を追って教育課程の改定が行われておりますが、その趣旨は、究極のところ、ゆとりのある、しかも充実した学校生活を実現し、児童生徒をして生きがいのある学校生活を実現させることに尽きると考えます。小学、中学、高校とそれぞれの学校において、特色ある教育課程を編成し、担任や友人との人間関係や触れ合いを図り、勤労体験的な学習、ボランティア活動による社会教育参加等、創意に満ちた多彩な教育活動の実現を図っているところでございます。 こうした活動を通じて、子供たちに、学校生活の厳しい中に楽しさを味わわせ、畏敬するものを見出したり、働くことの喜びや価値を発見したり、物事に感動し得るみずみずしい感性を身につけたり、ひいては生きがいを感得させようとするものであります。なお、このことは、生涯教育の観点から学校教育を見直すとき最も重要な課題となるべきものであると考えます。県教育委員会としましては、真にあすの日本を担う青少年の育成に万全を期するよう最大の努力を傾注する考えであります。 なお、子は親の後ろ姿を見て育つと言われておりますが、親の額に汗する生き方が青少年に与える影響の大きさを思いますときに、家庭教育の重要さを見逃すわけにはいきません。親もまた姿勢を正して、子育てについては学校と責任を分担すべきでありまして、この面につきましても社会教育の充実を一層図っていく考えであります。 次に、教職員の資質の向上についてお答えいたします。 保護者や社会の信頼を得るために、教師一人一人がみずからの姿勢を謙虚に反省し、教師たるべき道を探求すべきであるという御趣旨には、全面的に賛意を表するものであります。 教師は、まず教育者としての倫理感、使命感をみずから確立しなければならないと思います。言うまでもなく、師弟の間は愛情と信頼で結ばるべきでありまするが、教師は畏敬されてこそ初めて子供を教育できるのでございます。そのためには絶えずみずからを高めていく努力が必要であります。 県教育委員会におきましても、教師みずからが職責の自覚による自己研修に期待しますとともに、新規採用教員研修、教職経験者研修等各種の研修には、さらに工夫を加え、また自主的な研修を助成するなどの施策を通じて、その資質の向上を図っているところでございます。 また、研修の実を上げるため特に強調したいことは、学校現場における好ましい人間関係についてでございます。学校長を中心として、全職員が一体となって秩序ある学校運営に努める中で、先輩教師は後進者を育てていくという校内研修体制が確立されるように指導していく考えでございます。  〔教育長外村次郎君登壇〕 ◎教育長(外村次郎君) 文化財の問題についてお答え申し上げます。 これまで県におきましては、文化財紹介のため、たとえば写真集の「熊本県の文化財」の刊行や、あるいは県指定文化財の標識の設置、また説明板の設置等にも取り組んでまいったところでございます。また他方、文化財保護大会の開催もいたして普及に努めておるわけでございます。 また、さらに市町村や民間においてもいろんな取り組みがなされておるわけでございますが、ただいま先生御指摘のとおり、これらの資料の中には、非常に専門的ではあっても一般になじみにくいものがあったり、また頒布の範囲が限られておるといったようなこともございまして、もっと身近なものとして利用できるようにという御提言は、まことにごもっともでございます。今後この面に十分配慮いたしまして、文化財の保護、普及には一層心してまいりたいと考えます。 なお、県立図書館の建設に当たりましては、建設委員会等で御審議をいただくわけでございますが、熊本の歴史を知るために必要な資料や図書を一カ所に集めてはという御提言につきましては、貴重な御意見といたしまして十分検討させていただきたいと考えます。  〔下川亨君登壇〕 ◆(下川亨君) ただいまの教育委員長の熱意のある答弁、本当に感謝申し上げます。この答弁が現実に教育現場の中で反映しますことを心から希望するものです。 ただ、けさほどの熊日の新聞に、またもいろいろ統計が出ております。「中学校教師の素顔による調査」ということでございますが、教師たちの子供に対する意識と実際の生徒の考え方の中にずれがあるようでございます。このようなことも十分認識のもと、教育委員会が本当に時代を担う青少年のために御努力あらんことを心からお願い申し上げます。 なお、時間が余りありません。いまの文化財につきましては、今後図書館建設に当たって、そのような資料館をつくりながら、どこにだれがいつ来ても熊本県内の文化財がわかるといったような一目瞭然たる目録、そのようなものをつくっていただきたい。それが文化財保護に対する本当の姿ではなかろうかと、このように思います。期待してやみません。 あと、質問を二つほど残しております。熊本都市圏の観光振興についてということで準備いたしておりましたが、私は、観光行政の中で、阿蘇、天草、このように本当に熊本には観光に恵まれた土地があるわけでございます。しかし、この中で一番県下の中枢都市であります熊本市圏の中、歴史と文化、新しさの中に古さを持っております熊本市を観光の目玉にすべきではなかろうか。また、熊本城だけに頼ることのない観光をしなければならない。熊本城の周辺には、博物館があり、美術館があり、そしてまた今度、伝統工芸館ができるようになっております。このようなことを、一貫した観光行政を考え、そこに周遊のコースなどをつくりながら、修学旅行生の滞留、そのようなことに大きく目を向けるべきではなかろうか。 それと、いま一つ、熊本でよく耳にすることは、国際会議のできる会場を持ってないとか、会議場が足らないとかいう声を聞いております。そのような声をよくしんしゃくしながら今後観光行政を図っていただきたい。 また、伝統工芸館におきましては、熊本の郷土の物産を実演するというコーナーも設けられるようでございます。私は、実演するコーナーを単発的にやるのではなく、そこで常時開催をし、その常時開催によってでき上がった製品、県産品を、観光客に与える、売る、即売するということが、観光と熊本の振興策を結びつける大事な問題ではなかろうかと、このように思います。よく、よその町に行きますと、たとえば久留米がすりの工場と、即売をやる、観光コースに入れるというようなこともあっております。そのようなことに大きく目を開きながら、観光行政と物産の振興、両面からの問題を提起したかったわけでございますが、要望にとどめておきたいと思います。 いま一つ用意いたしました国際交流についてですが、現在、中国、アメリカと姉妹州の提携が予算化されておる中で、私は、一番近い私どもの文化のルーツであり民族のルーツである韓国にも目を向けるべきではなかろうかと、このように考え提案を申し上げるつもりでございましたが、時間の都合で割愛させてもらいます。 私は、この韓国の公州と熊本県の菊水町、これは民族のルーツであり文化のルーツであることで姉妹都市の提携がなされ、また、聞くところによりますと、阿蘇の温泉地と忠清南道の温陽という温泉地が温泉姉妹都市を結ぼうという計画もあるやに聞いております。 そのようなことから、この前、井ノ上議員も代表質問の中でおっしゃいましたように、産業との交流、このようなことを踏まえながら、韓国と熊本県、私は本当に身近なお隣の国として姉妹の提携を結ぶべきであるという見解を持っております。また登壇の機会がございましたら、この問題を取り上げてまいりたいと思います。執行部におかれましては、この問題も、特に国際交流の中で御考慮賜りたいと思うわけでございます。 時間的にあと一分でございます。大変欲張りまして早口になり、また質問を二つ残しました不手際をお許しいただき、執行部の御答弁に感謝を申し上げるところでございます。御清聴を心から感謝申し上げまして降壇をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手) ○議長(池田定行君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。  午前十一時五十三分休憩      ―――――――○―――――――  午後一時二分開議
    ○副議長(宮元玄次郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。西岡良平君。  〔西岡良平君登壇〕(拍手) ◆(西岡良平君) ただいま御指名をいただきました自由民主党の西岡良平でございます。このたびは、昭和五十六年度の重要な審議が行われますこの三月定例県議会におきまして、一般質問の機会をお与えいただきました先輩議員並びに同僚議員各位に対しまして心から厚くお礼を申し上げます。 すでに御案内のとおり、浦田前議長の後に牛深市より選出されましたが、何分にも議会の経験もございませんで、このような県議会の神聖な壇上で発言させていただきますことを、この上もない名誉であると思っております。もとより浅学非才な私でございますので、御質問申し上げる内容もきわめてローカル色の強いもので、先輩議員各位におかれましては御不満の点も多々あろうかと存じますが、初心者に免じ、最後まで御清聴のほどをお願い申し上げます。なお、知事初め執行部の明快なる御答弁をお願いいたしまして、早速、通告に従って質問に移らせていただきます。 まず初めに、水産業振興につきまして、知事に二、三お尋ねをいたします。 すでに御承知のとおり、わが国の漁業を取り巻くもろもろの情勢は、年々とその厳しさを増してきております。国際的には二百海里のもとで、次々に押し寄せる石油危機に直面し、また国内的にも、海洋環境の悪化による資源の減少、そうして一般消費者の魚離れ、さらには魚価の低迷などによって、内外にわたりきわめて厳しい環境のもとに置かれております。特に、漁船漁業に対する打撃は大きいものがあるのでございます。また加えて、気象、海況、漁況などに支配されやすい漁船漁業にとりましては、その経営は実に不安定で、漁船漁業からの転換を迫られているのが現状であります。 このような情勢の中にあって、本県の水産業は九八%までが沿岸漁業に依存している実態のもとで、漁業の振興につきましては、とる漁業から、つくる漁業へと転換を迫られ、県におかれましては、各種公共事業の導入を図っておられ、いわゆる栽培漁業の推進に努力されておられることに対しまして心から敬意を表するものでございます。とりもなおさず、このことは、資源の培養と管理型漁業への移行であり、限られた資源を有効にし、さらには、その資源の高度利用を促進することによって、安定した水産物の供給を確保することが漁業経営の健全な発展につながるものと思うわけであります。 申し上げるまでもなく、水産業は、日本国民の動物性たん白質の約半分を供給している重要な食糧産業でありまして、本県のような自然条件に恵まれた好漁場を最大限に生かした漁業生産をさらに増大するためには、一昨年の十二月定例県議会におきまして、先輩の杉森議員の質問にもありましたような、海洋牧場的構想をさらに具体化していく必要があり、昭和五十五年度から調査が開始されておりますところの天草外海・有明湾口海域総合開発事業につきましては、天草に住む住民の一人といたしまして大きな期待を持っておりますので、さらに強力に推進していただき、そうして漁船漁業経営の安定を願うものであります。 さて、ここで天草地域の現状を見てみますと、まことに残念なことではございますが、本渡市と大矢野町を除いて、引き続いて過疎化が進行しているような状態であります。古い資料でまことに申しわけございませんけれども、わが牛深市におきましては、昭和三十年に三万八千人でありました人口が、昭和五十年には二万四千人に減少し、実に三七%の減となっておるのでございます。また、十五歳以上の就労者の推移を見てみましても、同じく昭和三十年に一万四千八百人であったものが、昭和五十年には九千四百人と五千四百人もの減となっているような実情であります。特に、八十年代は地方の時代と言われておりますけれども、地方の自治体におきましては、自主財源の割合がますます低下していることは御案内のとおりであります。 先ほど申し上げましたように、これからの過疎の進行に歯どめをかけるためには、県下一の水産都市を標榜する牛深市にありましては、次代を担う若い後継者が安心して残れるような魅力ある水産業界をつくり育てる必要があることは言うまでもないことであります。しかしながら、近年牛深周辺の漁場環境は、現状のままではとても発展の期待は持てないのが実情であります。なんと申しましても、県下第一を誇る魚類養殖場ではありますが、過密養殖による環境の悪化、ひいては生産性の低下にもなりかねないので深く憂慮いたしておるところでございます。また最近では、品質的に日本一と言われる県産の真珠養殖漁場との関連もありまして、区画漁業権の問題の中で、関係者といたしましても常に頭を痛めているようなわけであります。 このような観点から、現在比較的経営が安定していると言われております魚類養殖振興のために、漁場の拡大、未利用漁場の開発などによって、先ほど申し上げました真珠養殖漁場との調和も保てるものと思うわけであります。 次に、磯根資源についてですが、私は海辺で生まれ育ってまいりましたが、その当時のころを思い浮かべてみますと、いそに行っては貝や小魚をとって遊んでいたことを思い出すのでございます。去る三月十日の熊日紙上に、「イセエビ宝庫復活へ」という見出しで報道されておりましたように、近ごろでは、イセエビ、ウニ、アワビ、サザエなどの生産量は急速に減少しており、これらによって生計を立てている漁業者は将来を非常に心配しているところであります。 最近は、特に都市化に伴うところの生活排水などによって、漁場の汚染、荒廃が大きな社会問題となっていることは御承知のとおりでありますが、ただいま申し上げましたような漁場環境の悪化が原因なのか、あるいは乱獲によるところの資源の枯渇が原因なのかははっきりいたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、藍より青い天草の海に、往年のような磯根資源の復活を心から念願している次第であります。 また、本県沿岸各地で実施されております魚礁の設置は、特に、釣り延べなわ漁業者から大変に喜ばれておるようでございます。大型魚礁及び超大型魚礁が設置されつつありますが、苓北沖では全国一と言われるほど効果を上げていると聞いております。これらの魚礁は、魚のすみかとしてばかりではなく、産卵の場、稚魚の成育の場としても重要でありまして、今後も大いに魚礁漁場の造成に力を入れるべきであることは言うまでもありません。特に天草沖は、各種魚類の通り道、すなわち魚道が魚種ごとに周年形成されており、魚礁設置による効果が大きく期待されるところであります。 以上申し述べましたような、もろもろの問題を抱えている牛深市を中心とした地域の漁業振興につきまして、知事はどのようにして推進していかれるお考えなのか、その方策をお伺いいたします。 次に、当初申し上げましたように、近年、燃油の高騰と魚価の低迷による漁船漁場への打撃はまことに深刻なものがありまして、たとえて申しますと、牛深のまき網漁業などは、沖にイワシの大群が押し寄せているにもかかわらず、魚価と燃油経費のバランス上、やむなく出漁制限や漁獲制限を強いられているような現実問題があり、また、いつ押し寄せて来るかわからないイワシの大群を目の前にして、手も出せないでいる漁業者の心中を察しますときに、何ともたとえようのないいら立ちを感じるのでございます。燃油高騰にあえぐ漁業者に対しまして、これまで以上に暖かい手を差し伸べていただきたいと心から切望をいたしますと同時に、その対策につきまして、いかなるお考えであるかをお尋ねいたします。 以上、申し上げました四点につきまして知事からの御答弁をお願いいたします。 続きまして、教育長にお尋ねいたします。 先刻より、本県水産の現況につきましてはるる申し述べてまいりましたが、何といっても当面の大きな問題は、生産構造の変化と相まって、優秀な漁業後継者を確保することであり、このことは、過疎化対策と同時に、水産振興のかぎを握っているものであります。 御承知のとおり、本県には、わが郷土天草に県下唯一の水産高校を擁し、関係者の並み並みならぬ努力と英知により着実にその実績を上げてこられました。改めて敬意を表するものであります。今後さらに地域の水産振興を図るためにも、漁業後継者育成についてどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。 御答弁をいただいて再登壇させていただきます。  〔知事沢田一精君登壇〕 ◎知事(沢田一精君) お答えをいたします。 牛深地域は、従来から、まき網漁業を初め各種の漁船漁業及び海面養殖業が盛んで、漁業生産量は約三万六千トンと、県下全体の生産量の約四分の一を占めておるところであります。 しかしながら、御指摘のように、近年は、養殖漁場の密殖傾向や磯根資源の減少などの問題が発生しており、県としても、これら漁場の改良、造成に努力をしておることは西岡議員も御承知のとおりであります。 まず、魚類養殖漁場につきましては、現在、養殖適地の大部分がすでに利用されており、漁場拡張の余地はほとんどないという現状でございますので、今後、漁場を拡大するためには、いままで使っていない未利用漁場の新規の開発が必要であると考えます。 このために、現状では風や波が強いなどの理由で利用されていない海域について、人為的な手段を講じて波浪をある程度阻止して、新たに養殖場を造成する技術が開発されなければならないと考えております。牛深の印度瀬付近において、浮き消波堤などによる漁場の造成が可能であるかどうか鋭意検討中でございまして、可能ということになりますれば、これらの事業を推進してまいりたいと考えております。 次に、イセエビ、アワビ、ウニ等の磯根資源の減少は、全国的傾向にあるとはいえ、まことに遺憾であり、この対策といたしまして、栽培漁業センターにおいて、これら資源の種苗生産と放流に努めているところであります。 さらに新年度から、牛深市下須島地先にイセエビを対象とする大規模増殖場開発事業を実施する予定であります。また、磯根生物のえさとなります海草類の増殖、すなわちモ場造成技術の開発とあわせて、資源の増殖を図っていきたいと考えております。 第三点の御質問にお答えいたします。 天草沖の大型魚礁群の造成につきましては、本年度から調査を開始いたしました海域総合開発調査事業の結果を踏まえまして、天草西海域沖合いに大型の人工礁を配置して、回遊魚の滞留及び誘導を図って生産の増大を期したいと考えております。 これら大型魚礁群造成の一環として、五十六年度、来年度におきましては、牛深市と鹿児島県の県境付近において、回遊魚を滞留させ、さらにこれを不知火海方面に誘導するための人工魚礁群を造成いたしたいと考えまして、そのために必要な調査を実施する予定で、本会議に予算の御提案を申し上げているところであります。 第四点は、漁業用燃油対策についてでございますが、国に強く働きかけますと同時に、昭和五十四年度から御承知のように漁業用燃油対策特別資金を創設いたしまして、来年度におきましては四億円の枠を一応見込んでおり、また、貸付条件の緩和措置を講ずるなど計画をいたしておりまして、できるだけきめ細かい配慮を行ってまいりたいと考えております。 以上、お答えをいたしましたほか、各種の公共事業を積極的に導入して、漁場及び漁港の整備を図り、栽培漁業を中心に推進し、将来は、管理型漁業を目指して漁業生産の増大と経営の安定に努め、冒頭に申し上げました、県下最大の漁業地区である牛深の漁業発展のために一層努力をいたしたいと考えております。  〔教育長外村次郎君登壇〕 ◎教育長(外村次郎君) 漁業後継者育成についてお答えいたします。 御指摘のように、苓北町の水産高校は、県下唯一の水産高校でございまして、本県といたしましても相当な施設をいたしまして、誇りといたしているところでございます。特に、本県水産の特性を生かした栽培漁業実習施設は、他県に類を見ない特色ある施設でございます。また今後、種苗センターの整備充実等も行い、一貫した栽培漁業教育を図る考えでおります。しかしながら、ただいま御指摘ございましたように、漁業後継者の育成について、あるいは水産教育の振興につきましては、現状必ずしも十分と言えない状況にあると自覚いたしております。 漁業後継者の状況は、主として水産増殖科、漁業科等が対象になるかと存じますが、この面で、昭和五十五年で五十七名の生徒、うち女子生徒が九名でございますので、男が四十八名でございますが、そのうち十九名が大体県内の漁業後継者として進路を考えておる状況でございます。 今後これをさらに振興いたしますためには、やはり魅力ある学校経営をしていかなければならないというふうに思います。そのためには、特に地元の漁協とも十分連携をとりまして、水産教育の認識を深め、またその教育の自覚を深めることが第一と考えます。たまたま昭和五十七年度から新教育課程が実施されるわけでございますが、この教育課程の編成には、その辺のことも十分考慮、研究をして盛り込みたい。また、学校紹介の浸透、あるいは寄宿舎の受け入れ体制の整備、また社会的ライセンスの取得等種々工夫をいたしまして、指導体制を整備いたしまして、水産教育の振興並びに漁業後継者の確保に努力してまいりたいと思います。今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げます。  〔西岡良平君登壇〕 ◆(西岡良平君) 私、この議席を得る以前に、知事初め関係部局の方々が、特に牛深――天草全体の水産業の振興にかなり力をお入れになっているという話を承っておりました。きょうは、この議場で知事から前向きのお答えをいただきまして大変安心をしたわけでございます。今後ともなお一層のお力添えをひとつ賜りたいと思います。 次に、関連しまして御要望を二、三申し上げてみたいと思います。水産加工と漁港整備について御要望を申し上げます。 まず流通加工関係につきまして、先ほど申し上げましたように、漁業はきわめて不安定な産業でございまして、ときたま大漁をいたしましても、魚価がダウンする、いわゆる大漁貧乏に泣かされることが多く、特に、イワシ、アジ、サバ等が大量に水揚げされるようなことがありますと、つい先日にもありました、イワシ一尾三円という法外な安値になることもしばしばであります。何とか流通の改善と付加価値を高めるための加工業の振興が熱望されているところであります。 御承知のように牛深は、静岡県の沼津と並ぶ煮干し加工の大変盛んな地域として全国的に有名であります。むしろ、製品の品質では牛深産のものが、大阪を中心といたしまして関西方面では人気があるようでございます。水産物の流通加工問題は、長年の歴史と消費者の嗜好などによって、行政面での対応も大変困難な面があろうかとは思いますが、せっかく漁業者が苦労してとった魚を一円でも高くするためには、付加価値のある水産加工業の振興を図ることだろうと思います。それがひいては魚価の安定にもつながることは明らかでありまして、県におかれましては、今後なお一層この問題に本腰を入れて取り組んでいただきますよう切に御要望を申し上げる次第であります。 次に、漁港整理について御要望を申し上げます。 牛深漁港は、県下唯一の第三種漁港として、県内外の多数の漁船が利用している良港であります。昭和二十六年度から始まった第一次漁港整備計画策定以来、第六次整備計画の現在までに、大型漁港基地としての各種機能施設が整備されつつありますことはまことに喜ばしく、知事初め関係部局の御努力に対しまして心から敬意を表する次第でありますが、最近の漁業の近代化及び漁船の大型化、高速化などに対応した漁港施設の一部に、いまだ不十分な面もあるようでございます。たとえば、長崎県の大型まき網船の二百五十トンから三百トン級の母船が満載して牛深港に接岸することはできませんで、現在では鹿児島県の枕崎あるいは串木野港などに水揚げされている実情であります。しかも、その水揚げされる九〇%までが、トラック便で牛深に搬入され加工業者の手に渡されているのでございます。 現在、牛深漁港の後浜・須口地区に、大型漁船基地としての整備とあわせて市街地の再開発を促進すべく整備中ではありますが、整備のおくれからいろいろの面で不便を余儀なくされておりますので、早急な整備促進を図っていただき、なお一層のお力添えをいただきますようお願い申し上げる次第であります。また、特に加世浦地区につきましては、係船が非常に困難な状態にありますので、荷揚げ場前面のしゅんせつをしていただき、容易に係船ができるようにお願いいたす次第であります。 以上、二点につきまして、くれぐれもご要望申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。 次に、羊角湾地域の農業用水確保と農業の振興についてお尋ねをいたします。 近年の農業情勢は、私が申し上げるまでもなく、経済の高度成長の過程から大きく揺れ動き、米、ミカン、牛乳などの生産過剰を初めとして、外国からの激しい農畜産物の輸入攻撃、農産物価格の低迷、農業後継者の確保難、農業従事者の高齢化など、問題を取り上げれば枚挙にいとまがないほどむずかしい問題が山積しております。このことは御承知のとおりであります。 このような厳しい農業情勢の中にありまして、わが熊本県は、九州食糧供給基地の中核として、農業生産基盤の整備を初め各種の農業施策が県政の重点施策として推進されておりますことは、農業立県を目指します自治体としまして当然のことでありますし、今議会に来年度予算として総額八百十億円の農林水産予算が提案されており、本県農業の発展のため、議会といたしましても積極的にこれに協力していかねばならないと思うのでございます。 その本県農業を、昭和五十四年度の県農業白書から見てみますと、十五万ヘクタールの耕地に立脚して順調な伸びを示してまいりましたことは、県御当局はもちろんのこと、農業団体を初め農家の方々の御努力のたまものであります。すなわち農業粗生産額の推移をながめてみますと、昭和四十年に全国で第十位でありましたものが、昭和五十年には第八位となり、さらに昭和五十四年には総額三千六百億円で五位へと大きく躍進しているのであります。このことは、全国にその名をとどろかせておりますイグサとかスイカ、メロン、甘夏ミカンなどの生産が精力的に進められた結果であろうと存じます。 しかしながら、この農業の地域的な生産に目を転じてみますと、地域によっては著しいばらつきがあるようでございます。農家一戸当たりの生産農業所得の県平均は百三十一万円でありますが、八代地域の二百二十七万円を最高に、菊池、鹿本、宇城地域のいわゆる平たんな広がりのある地域が、いずれも二百万円に近い生産農業所得を上げているのであります。ところが、残念ながら、わが天草地域は県平均の約半分で、八代地域と比較した場合には、実に四分の一弱の六十二万円しか生産農業所得がないのであります。 さらに、その天草地域の中でも、私の郷土牛深市、河浦町を中心といたします羊角湾地域は、何と五十万円という低さであります。これは、何を申しましても、農業を営む土地基盤に恵まれないということは明らかでありますけれども、羊角湾地域は、天草下島の西南端に位置し、さらに東シナ海に面した羊角湾を中心といたします地域でありまして、古くから農業、水産業に支えられてまいりましたが、農業にありましては、年平均気温十七度という温暖な気象条件に恵まれながら、急峻な山地が海岸まで迫る地形から、広がりのある平地に恵まれず、きわめて零細な農業経営に終始してまいったのであります。すなわち、河浦町の一町田川河口にあります一部の干拓地水田を除いて、ほどんどの耕地は傾斜地に立地しておりまして、農業生産基盤の整備も進まず、農業の近代化が立ちおくれた上に、一戸当たりの経営規模も県平均を大きく下回る五十九アールという零細さで、しかも耕地が分散していること、中小の河川に水田灌漑用水を依存していることなどから、不安定な営農を余儀なくされていたのでありまして、自給自足型の農業を脱し切れなかったのであります。 この結果として、農家は、生きて行かんがため、いやおうなく出かせぎ、日雇い賃金労務などに生活の糧を求めざるを得なかったわけであり、これが総農家戸数の中に八八%を占める兼業農家の割合であわられておりますし、特に第二種兼業農家率が県平均を大幅に上回る六八%になっているのであります。まさにこのことが、地域農業の高齢化、婦女子化となって、ますます労働力の不足を招き、ひいては営農意欲の低下を促す悪循環となって、ふるわない農業をつくり出したのではないかと私は思うのであります。 この旧態依然とした農業経営から脱却するためには、さまざまな問題があるにしても、経営規模の拡大、作物の産地形成と生産の安定による農業所得の向上を図る必要がありますが、これには何と申しましても水は不可欠な条件であります。灌漑用水は、河川の水を利用するのが最も経済的かつ効果的でありましょうが、地域の河川は水量に恵まれず、ダムをつくるような場所もなく、また地下水も全く期待できないところでございます。このために、昔から水は、しんぼうにしんぼうをして使ってきたわけでありまして、一たび日照りが続けば、地域の二千五百ヘクタールの耕地は干害を受け、飲み水さえ事欠く状態が続くのであります。このような状況の中で、昭和四十三年、国の直轄事業により羊角湾地域総合農業開発事業が着工され、地域はもとより、天草下島における農業の拠点として、地域農家に大きな期待を与えたのであります。 御承知のとおり、この事業は、羊角湾周辺の農地造成が可能な山林原野を開発し、天草の西南の温暖の地である気象的な特徴を生かしたミカン園を造成するとともに、湾の干がたに干拓造成して、地域農家の経営規模の拡大に寄与する一方、羊角湾の一部を締め切り、内部を淡水化して農業用水を確保し、生産性の低い作物しか栽培されていない傾斜畑へ水の手当てをすることにより、生産の安定と向上を図り、自立経営農家を育成する計画でありましたが、しかしながら、事業がようやく軌道に乗り、地域の農家も、これでやっと安心して、ふるさとで収益の高い農業ができると期待し、意欲を燃やしたやさきに、温州ミカン、米の生産過剰の大波であります。全国の農家がそうでありましたように、地域の農家も激しいショックに見舞われ、これを契機に、農家の農業に対する意欲、熱意は著しく減退してしまったと見るのは私一人ではないと思うのであります。折しも昭和四十五年に着手されました淡水湖の締め切り堤防工事は、漁場に影響を与えたとして、関係漁民の方方に対する補償の問題が漁民間に不和を与え、いまだに未解決のように聞いております。 羊角湾地域の農地は、先刻申し述べましたごとく、山が海岸まで突き出ている地形のため、谷間に開けた小さく狭い水田、急な斜面を切り開いた形の悪い段々畑が多く、その上、水量の豊かな河川がないことから、灌漑用水、防除用水等の水資源に恵まれず、低位生産に泣かされているのであります。特に、地域の基幹作物である約五百ヘクタールのミカン園に対する水の手当ては、ほとんどないにひとしい状況であると言わなければなりません。一方、その昔に干拓されました水田は、地下水位が高く、一たび雨が降れば冠水の被害さえ見られるほか、日照りが続けば、干ばつはおろか塩害さえ受けるような状態にあります。昭和五十六年度から水田利用再編対策の第二期対策も始まることになっており、水田汎用化は絶対的な条件となりますが、これらの水田の汎用化を進める上で、用排水の分離を行いますれば、水の絶対量も当然ふえることは容易に判断できるところであります。 このように、羊角湾周辺地域の農業、いや天草下島の農業にとりまして、今後農業用水の需要はまだまだたくさんあるわけであります。と同時に、近年国内における食糧自給力の低下から、土地の高度利用による自給率の向上が強く叫ばれておりますが、このような先人たちが血と汗で切り開いた耕地へ水を手当てし、生産力を上げて自給力の向上に質することは、時代を先取りした施策であると確信するものであります。 言うまでもなく、水は、土地や太陽とともに作物育成の三大要素であり、農業生産活動にとっては不可欠な要素であるほか、人々が快適な生活を営む上でも水資源の確保は必要欠くべからざる条件であります。水資源に乏しいこの地域にとりまして、羊角湾地域総合農業開発事業によります淡水湖の締め切り工事が中断されたままになっておりますことは、きわめて残念なことと言わざるを得ません。そこで、農政部長にお尋ねいたします。 地域の農業を発展させるためには、農業後継者の確保と営農意欲を喚起することはもちろん必要でありますが、経営規模の拡大を図り、温暖な気象条件を生かした作物の振興と、水の手当てによる生産の安定向上、品質向上が最大の課題でありましょう。このような意味から、現在中断されたままになっております淡水湖の建設は、まさにこのかぎを握っていると私は考えております。干拓地造成は、条件の整った耕地に恵まれない地域農家の規模拡大にはぜひとも必要な事業と考えますが、地域の農業浮上の上からも、また過疎化防止の意味からしましても、この事業に対する県の積極的なお考えをお聞かせいただきたいのであります。 御答弁をいただいて再登壇いたします。  〔農政部長原田富夫君登壇〕 ◎農政部長(原田富夫君) お答えいたします。 羊角湾周辺地域の農業は、土地条件等の制約等によりまして、体質の弱い農業経営から脱し切れない状況にありますことは御指摘のとおりでございます。このため、この地域におきます農業構造改善を積極的に推進する施策といたしまして、お話にございましたように、ミカン園九百七十七ヘクタールを造成し、あわせて羊角湾を締め切って、灌漑用水を確保いたしますとともに、百四十九ヘクタールの干拓を行うということを内容といたしました羊角湾総合農業開発事業が国営事業として開始されたところでございます。 しかしながら、その後、温州ミカンの過剰や、過疎化現象に伴う農業労働力の老齢化、婦女子化等の社会情勢の変化から、造成を辞退する農家が相当出てまいったために、当初計画されました造成面積九百七十七ヘクタールが大幅に減少いたし、実際に造成された面積は三百七十ヘクタールにとどまる結果となったわけでございます。 現在、羊角湾地域の農業振興を図ってまいりますために、天草事務所の関係各課及び普及所を中心にプロジェクトチームを編成いたしまして、畑作営農推進調査事業等を活用しながら営農指導を積極的に行っているところでございます。造成された三百七十ヘクタールには、ミカン、樹芸、桑などが作付されておりますが、ミカン価格の低迷などもございまして、一部には荒廃園や未植栽地がございます。このため、地域条件を生かした茶、雑柑を含む各種の作物について、関係農家を初め、県及び関係市町等において種々検討を重ねてまいったところでございますが、御承知のように、この地域は気象的に風が強く、加えまして、土壌条件の悪さや現下の厳しい農業情勢などから、決め手となる作物をただいままでのところ見出せないでいるというのが実情でございます。 ただ最近になりまして、温暖な気象条件等を生かしました、ごくわせミカンヘの高接ぎ更新が進められつつございます。また、一部の荒廃園や未植栽地につきましては、土地条件改善のための地力増進と肉用牛経営の安定化を図るために、飼料作物の栽培への動きが出ておりますので、県といたしましては、技術、経営の各般にわたる指導に最善を尽くしてまいりたいと考えております。 一方、干拓地造成につきましては、地域の専業農家の平均経営面積が〇・八ヘクタール程度と零細でございますために、一戸当たり一・六ヘクタールを増反希望農家に配分し、経営規模の拡大を図り、メロン、ピーマン、キュウリ等の野菜プラス肉用牛に、背後地の水稲、ミカンを組み合わせた複合経営により、地域の自立経営農家を育成するよう努めてまいる所存でございます。 いずれにいたしましても、この地域の農業振興を図っていきますためには、農業用水の確保はぜひとも必要であると考えております。また、このほかに、お話にもございましたが、用排水分離等のために、新たに農業用水を望む声もございまして、県といたしましては、市や町とも協議しながら利水地域の土地改良調査を進めておりまして、このためにも淡水湖締め切り工事や干拓地造成の完成を国に強く要請しておるところでございます。 ちなみに、この淡水湖の貯水容量二百三十万立方メートルは、これまで天草下島で開発いたしました楠浦、志岐及び現在工事に着手いたしております五和の三つのダムの貯水容量の合計二百二十四万立方メートルに匹敵する規模でございまして、将来、水田の圃場整備や畑地灌漑の実施に伴って、下島地域において新たに需要が見込まれる農業用水を確保するためにも、ダム開発の適地が少ない当地域では有効な施策であると考えておるわけでございます。 しかしながら、御承知のとおり、現在漁業補償をめぐりまして訴訟が提起され、関係漁業者と国の間で目下係争中でございまして、このため湾の締め切り工事が中断されているわけでございます。私どもといたしましては、判決を待っていては工事再開まで相当長期を要することが予想されますので、何とか関係者の間で話し合いが進められ円満解決が図られるよう期待をいたしておるわけでございますが、県といたしましても、この早期解決が図られ工事再開が一日も早く実現できますようにできるだけの努力を傾注してまいるつもりでございます。  〔西岡良平君登壇〕 ◆(西岡良平君) 私、何度となく過疎化の問題を言っておりますけれども、要するに地域の過疎化がますます進行しているというのは事実でございます。先ほど申し上げました水産業にしましても、農業にしましても、行政の方から何らかの施策を講じなければ、地方の時代と言われますけれども、その地方の時代が、いつ現実のものになるのかということを非常に憂うるものでございます。そういう意味におきまして、今後ともなお一層の御尽力を賜りますようお願いを申し上げまして、次の質問に入りたいと思います。 次に、観光の振興について知事にお尋ねをいたします。 観光振興施策は、行政としましても非常にむずかしい分野であると聞いておりますが、知事は、三期目の県政の重点施策の一つとして観光の振興を取り上げられ、その推進に鋭意努力してこられた結果、特に、最近県民の間に知事の観光振興に対するお考えが浸透しつつあることを私は高く評価しているところであります。 ところで、これからの観光は、観光客の志向が多様化の方向にあり、それに伴って観光地間の競争は一層激しくなり、優勝劣敗の厳しい時代を迎えているのではないかと存じます。このような時期に当たり、本県の観光を浮揚させるためには、何と申しましても主役は民間サイドであることはもちろんでありますが、行政でなすべきことも多面にわたっており、かつまた非常に重要なことであると思います。 昭和五十六年度は観光関係事業に大幅な予算措置をされておりますが、これからの観光振興をどのように進めようとしておられるのか、知事の基本的なお考えについてお尋ねをいたします。 引き続きまして、天草下島地域の観光振興について商工観光労働部長にお尋ねいたします。 皆様もよく御承知のとおり、天草は本県の西南端に位置し、有明海、不知火海から天草灘にかけて大小百二十余の島々から成り、上島、下島を合わせると、わが国では、沖縄、佐渡ケ島に次いで大きな島として知られております。この天草は、内海の波静かな不知火海に面する美しい島々に恵まれた天草東海岸、これに対しまして、無限に広がる外洋天草灘に面する天草下島西海岸には雄大な海洋風景が見られます。このすぐれた自然の風景が認められて、昭和三十一年七年には、雲仙とあわせて海の国立公園として指定を受けたことは、皆さんすでに御承知のとおりであります。また天草島は、古くは幕府の天領として所有されたり、キリシタン文化がはぐくまれた時代もあり、その後の天草の乱に見られるように、弾圧による殉教の地としても知られており、キリシタンにまつわる歴史や史跡等が各地に散在しております。 ところで、この天草も、天草五橋の開通以来、いまでは年間五百万人を数える観光客が訪れており、阿蘇と並んで本県の代表的な観光地となっております。しかしながら、天草の観光利用の実態は、このように多くの利用者があるにもかかわらず、その大半は天草五橋周辺にとどまり、滞在することなく島原や熊本方面に抜けているのが実情であります。いわゆる天草の玄関口である松島周辺に立ち寄り、見学して素通りしているようで、私たち天草下島に住む者にとりましては、どうにかならないものかと考えるわけでございます。このようなことから、私が常日ごろ考えますことは、天草の入り口まで訪れている観光客を、天草下島の各域に引え入れることはできないものだろうかと思うわけであります。 先日、先輩の金子議員の質問にもありましたように、天草を広く利用してもらうためには、どうしても交通基盤の充実を図っていただかなければなりませんのはもちろんのことでありますが、各地の特性を十分に生かした観光拠点づくりやら、それらを結ぶ魅力ある観光ルートづくりを行わなければならないと考えるわけでございます。 このようなことから考えてみますと、先ほどから申し上げましたように、天草には各地に観光資源が散在しておりますが、その中でも特に、これからの観光地として期待が持て、天草に訪れる観光客を引き入れるだけの魅力を持つ地域としましては、天草下島西海岸一帯があると思われます。いわゆる牛深―苓北間のサンセットラインであります。下島西海岸は、五橋のかかる松島が天草の玄関であるならば、天草の奥座敷とも言えるところであります。 一部を御紹介しますと、北から、ともえ湾で知られる富岡半島、泉源に恵まれた下田温泉、国の名勝地指定の妙見ケ浦、殉教の島のランドマークと言える大江、崎津の天主堂、深い入り江を持ち真珠養殖の盛んな羊角湾、県下一の規模を誇る牛深の漁港などがあります。また、美しい海のシンボライズとして、富岡、天草、牛深の海中公園もあります。これらをつなぐようにして、奇岩奇勝の男性的な西海岸が続き、この中に、白鶴浜、砂月浜が代表する白砂の海水浴場があります。また、豪快ないそ釣りを楽しめる岩場が各地に点在しております。これに加えて、温暖な気候、天草灘に沈む夕日、海岸部にあるツバキの自然林、そうして、さらに勝海舟、頼山陽、与謝野鉄幹、晶子、北原白秋を代表する「五足の靴」の一行、林芙美子らの文人たちの足跡もあります。しかし、何といっても一番の自慢は、牛深漁港を控えて海の幸が大変豊富なことでございます。 このように変化に富み、観光資源の集積した地域を、有効に活用した魅力のある観光地を形成し、観光客の流動を促せないものだろうかと思うのであります。また、近年、長崎、天草、鹿児島を結ぶ九州西海岸の観光ルートも形成されつつある中で、受け入れ整備を進める必要があるのではないかと思われるわけであります。 この中でも、苓北方面は長崎から、また牛深方面は鹿児島からの交通の結節点となり、重要な役割りを果たさなければならないと思いますが、特に牛深市は、ある程度の都市機能を備えております反面、朝夕には、勇壮な漁船の出船、入り船のさまは、まことにみごとな景観であります。また、あの有名なハイヤ節にも見られますように、南国情緒豊かな土地柄でもございます。すでに御承知の方もあろうかと存じますが、ハイヤ節は、北前船などによって、新潟県のあの有名な佐渡おけさを生み、さらには青森県の津軽アイヤ節、宮城県の塩釜甚句など枚挙にいとまがないほどであります。日本民謡の一つの源流になっております。 ただいま申し上げましたように、観光滞留拠点としての魅力を十分に備えていると思うのであります。観光の振興を地元に住む者から考えてみますと、観光の発展は、地域の経済活動を活発化させるばかりでなく、過疎化対策にもなり、地域に住む人にとっては、このすばらしい郷土を、他の地域の人々に紹介し、見てもらうことは、地元にしてみますと大変な誇りにもなるわけであります。 たとえば、私の専門とする漁業一つをとっても、観光との結びつきを考えてみますと、漁業を見せる、あるいは体験させる、食べる、加工品として、おみやげ物とするなど多くの直接的な結びつきが考えられるのであります。さらには、全国的に土地の名を宣伝できることにもなり、漁業を営む者にとっても、観光客にとりましても魅力のあるものと思われます。 このようなことから観光を考えてみますと、天草地域の振興を図っていく上で非常に重要なことであると思われます。ついては、県におかれましては、観光の振興を県政の重要な柱としておられますが、天草地域、特に牛深を中心としました下島西海岸地域に対して、いかなる施策を持っておられるのか、商工観光労働部長にお尋ねいたします。  〔知事沢田一精君登壇〕 ◎知事(沢田一精君) 資源に恵まれております本県観光産業を何とかして振興をさせたいと考えておるわけでございますが、なかなかむずかしい面がたくさんあるわけでございます。 最近の観光の態様を見てみますると、非常に大きく幾つかの変化をしておると思います。第一に、従来の休養とか娯楽観光から、体験行動型の観光へ移りつつあるということが一つ、また、大きな団体旅行から小グループ旅行へと変わりつつあるということも言えるかと思います。また三番目には、各種のレジャー施設等を併設したデラックスないわゆるホテルと申しますか、宿泊するにいたしましても、デラックスなホテルを利用するという高級志向型と、ハイキングや自転車旅行等を基調といたしまして、宿泊する場合は民宿を主体とするような、いわゆる低廉な安上がりの旅行志向型と、こういうふうに二極分化の傾向もますます強くなってきておるようでございます。 いま申し上げましたように、これからの観光は、それぞれの観光客の好みが、このように多様化する方向にございますので、これまで以上に観光客の厳しい選択を受ける時代になってきたと思うわけであります。なまやさしいことでは観光客を呼ぶことはできない、あるいはその滞留性を高めることはできないという時代になったような気がするわけでございまして、観光地間の競争も一層激しくなる時代を迎えるというふうに覚悟しなければならぬと思うわけであります。 こういう観点に立ちまして、それでは本県の観光振興をどのような方向で考えるか。基本的には、やはりよいものと申しますか、本物の観光地づくりを基本にしなければならぬと思うわけでございますが、当面、たとえば来年度予算等と関連して申し上げますと、幾つかの重点を置いて、これからこれに必要な対策を進めていきたいと、こう考えておるわけでございます。 第一に、行政が関与いたします分野というのは、おのずからいろいろな面で限界があるわけでございまして、魅力ある観光地づくりは、地元住民みずからの創意と工夫によって、みずからの力で進めていただくということが、本当に定着すると申しますか、本物の観光地を将来長きにわたってつくり出していく基本であるというふうに考えるわけでございます。したがいまして、行政といたしましては、そういった地元住民の意向というものをできるだけ掘り起こし、これを組織化していくという方向にひとつ重点を置きたいと考えております。たとえば、県内各地に「あすの観光牛深をつくる会」といったような組織をつくっていただきまして、そしてお互いが地元の将来の観光ということについての創意と工夫をしていただくようにお願いをいたしたい。そういう組織づくりと、その活動の促進助成といったようなことを一つ考えております。 第二には、本県にはまだ利用されていない観光資源や、あるいは発見されていない観光資源もまだまだたくさんあるかと思うわけでございますので、その発掘、見直しによりまして、新しいこれからの観光的な魅力を引っ張り出してまいりたいということを考えております。そのために、昭和五十五年度におきましても実施をいたしてまいりましたが、来年度におきましても、広域観光振興計画策定に関するいろいろの調査を引き続き実施してまいりたいと考えております。隠れたそういった魅力のほかに、たとえば歴史の道の調査であるとか、あるいは遺跡の確認調査であるとか、あるいは風土記の丘の建設への努力など、行政としてやるべきことについても、ひとつ着々と進めてまいりたいと考えております。 第三に、地域の特性に合った観光振興を推進しなければならないと考えております。天草の特に西海岸等につきましての構想につきましては、御指名によりまして部長から答弁をさせたいと思うわけでございますが、たとえば阿蘇におきましては、これから取り組もうとしておりますいろいろな事業があるわけでございまして、たとえば大規模な年金基地の建設であるとか、新しく憩いの村の建設等を進めたいと思っております。また、大きなことではございませんけれども、阿蘇の四季折々の野草を集めた阿蘇野草園の建設といったようなことも、来年度予算で措置をいたしておるわけでございまして、そのほかの地域につきましても、国立公園、県立公園の施設整備を初め、たとえば緑の村や自然休養村といったような制度もございますので、そういった国の制度も積極的に受け入れまして充実を図ってまいりたい。そのことが第三のお答えでございます。 第四番目に方針といたしましては、県のいろいろな構想や事業とあわせまして、関係市町村の観光地づくりの努力も助成していかなければならない。四番目には、そういうことを考えておりまして、市町村がみずからなさいます観光基盤の整備について一層援助を強化いたしまして、民間の活力も生かされるように誘導してまいりたいと考えております。 第五番目の重点といたしましては、このように魅力のある観光地づくりを推進する場合、施設をつくることとあわせまして重要なことは、観光地のPR、あるいは観光地の管理演出などであろうと思うわけであります。いろいろなお話もございましたが、各地にある特色ある祭り、あるいは年間を通じての催し物、あるいはその地域で生産されます特色のある一次産品、たとえば農林水産業の素朴な、そして新鮮なそういう料理などについて、いろいろと工夫研究をしてもらいまして、そして魅力をつくり出していくといったようなことも必要であろうと考えるわけでございます。また、誘致、宣伝につきましても、従来に増した充実を図ることとし、その内容、方法についても、抜本的にひとつ洗い直しを図り、本当に効果的な宣伝方法を図ってまいりたいというようなことも考えております。 以上、数点について、観光産業の振興という観点から当面考えております基本的な考え方について御説明を申したわけでございますが、要は、冒頭申し上げましたように、その時代時代で変化いたしまする観光動向の中にありまして、おくれをとらないように積極的に対応してまいらなければならないと考えております。  〔商工観光労働部長八浪道雄君登壇〕 ◎商工観光労働部長(八浪道雄君) 天草地域、特に牛深市を中心としました下島西海岸地域の観光振興策につきまして、お答えを申し上げます。 天草地域の観光は、御指摘にもありましたように、交通事情や、あるいは観光拠点となるような施設が非常に少ないなどのために、天草五橋周辺の利用にとどまりまして、西海岸や牛深など下島地域への入り込み客は少ないというのが現状でございます。 牛深を含めました西海岸地域は、すぐれた海の景観と、キリシタンにまつわります史跡が基調となりまして、明るい風光と殉教のロマンが融け合った美しいイメージの観光的素質に恵まれているわけでございます。 さきに日本観光協会が行いました全国の観光資源の調査によりましても、下島西海岸地域は、全国から観光客を誘致できる魅力を持った観光地にランクされているところでありまして、これからの観光地として有望視されているところでございます。 当地域の観光は、やはり美しい海、新鮮な海産物、ロマンあふれるキリシタンの歴史、文化等の広域観光流動の一翼を担うに十分な観光資源を生かしながら、今後増大傾向にあります島嶼観光や歴史観光等の需要に対応しながら、家族旅行や小グループ旅行に照準を合わせた観光地の形式を目指してまいりたいと考えております。 県といたしましては、これまでに下須島等の海中公園、遠見山、西平、妙見ケ浦、富岡城址の園地、遊歩道等の利用施設の整備を進めてきたところでございますが、今後とも、展望や休憩等にすぐれました地区には、園地、駐車場、海水浴場等の整備を初め、お話にもありましたとおり多くの観光資源を多面的に活用しますために、これらの連携を図るルートの整備を一層進めてまいりたいと考えております。 さらに、観光客の増加を図りますため、五十六年度におきまして、キリシタン史跡めぐりコースのための遺跡発掘調査等を行いまして、今後整備を図りますとともに、下島の奥深く観光客を誘導します施設といたしまして、牛深に国民休暇村を誘致すべく五十五年度におきまして調査を実施しているところでございます。 特に、牛深市は九州でも有数の漁業基地でありますので、この国民休暇村の施設計画の中に、漁民の歴史、あるいは文化、生活などを紹介する施設を加えるなどいたしまして、特色を持たせ、牛深の観光拠点となるよう整備を今後進めてまいりたいと考えております。 また当地域は、新鮮な魚介類等が豊富にありますので、これを生かしました当地域ならではの郷土料理や、みやげ品、またハイヤ節などの郷土芸能等に創意工夫をこらしまして、観光的演出の強化に努めてまいりたいと考えております。 今後、地域の特性を生かしながらいろいろと検討していかなければならないわけでございますが、本年度専門家に求めております天草地域の振興計画調査の報告を踏まえまして、地域住民の参加を得ながら積極的にこの地域の観光振興を図ってまいる所存でございます。  〔西岡良平君登壇〕 ◆(西岡良平君) 知事から熊本県の観光振興について詳しく御説明をいただきましたけれども、確かに相手のある観光でございます。大変むずかしい面があろうかと思いますけども、なお一層観光の振興に御努力をいただきたいと思います。また、八浪部長さんからは、牛深に国民休暇村を、いま計画中で、調査中であるということでございますけれども、ぜひ実現に向かって努力をしていただきたいと思うわけでございます。 私の用意いたしました質問は、これで終わったわけでございますけれども、知事初め執行部におかれましては、大変明快なる御答弁をいただきまして本当にありがとうございました。また、同僚議員の皆さん、最後まで御清聴まことにありがとうございました。これで終わります。(拍手) ○副議長(宮元玄次郎君) 以上で本日の一般質問は終了いたしました。 明十七日は午前十時から会議を開きます。日程は、議席に配付の議事日程第九号のとおりといたします。 本日はこれをもって散会いたします。  午後二時十七分散会...